鬼と戯れ言。 ページ20
「─── さて、」
目の前の人が口を開いた瞬間、再びドアが勢いよく開いた。
「センゴク元帥！！黒ひげ海賊団からインペルダウンの方に送還された火拳のエースが手がつけられない、との報告が…… ッ？！失礼いたしましたッ！！！」
『え……？』
飛び込んできた海兵さんが私を認識した瞬間慌てたように口を噤んだ。
だけど、私はもう聞いてしまった。
『、火拳の、エース？』
インペルダウン？送還？…どういうこと？
黒ひげ海賊団から、といった。まさか、まさか！
くるりと踵を返して開け放たれたドアの、固まっている海兵さんの横をすり抜けて廊下に出る。
外に立っていたであろう海兵さんが慌てたように腕を掴んできたが、構わず長い廊下の先を大股で歩いている彼に向かって叫んだ。
『白ひげ海賊団には手を出さないって言ったじゃないですか…っ！！』
「あァ？」
ゆっくりと、振り向く。
「情報が随分早ェな！そうだ、おれからは手を出さないつもりだったぜ？だけど向こうから飛び込んできたんだから仕方ねえだろう？」
『どういう、』
「囚われたお姫様を助けに来たのさ。残念ながら王子様じゃ力不足だったようだ！ゼハハハ！」
『ちょ、まっ…！』
「君！戻りなさい！」
くる、と前を向いて歩き出したティーチさんに追いすがろうと足を出すが、海兵に腕を掴まれてそれをさせてくれない。
廊下の先を曲がって消えた背中。足から力が抜けてへたりとすわりこんだ。
( 嘘でしょう？ )
インペルダウン。白ひげ海賊団で、何気なく交わされる冗談の応酬の中で何度が聞いたことのある言葉。一度入ったら出られないという、鉄壁の牢獄。
「そんな話をAに聞かせんじゃねェ」という誰かの言葉でその話は終わったが、ちらりと聞こえた拷問の話は、えぐすぎた。
ティーチさんの言葉を思い出す。
────「囚われたお姫様」は、私？
私を助けようとして、エースは捕まったの？
私なんかのために、エースが？
『 うそ、』
迷惑をかけないために、みんなが傷つかないために、あそこを離れて死ぬように生きていたというのに、それなのに。
────エースが捕まった。
その事実は、あまりにも残酷すぎた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2715人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アップルパイ(プロフ) - お話自体も泣けるしあとがきで追い討ちかけてきた…最高すぎる作品です…‼︎ (2月28日 22時) (
レス) @page50 id: 0ce3ef1535 (このIDを非表示/違反報告)
ミキ(プロフ) - この話凄く好きです！最後の方泣きそうになりました笑他の作品も読んでみたいなって思いました！ (2月3日 6時) (レス) @page50 id: 8f0b2947d1 (このIDを非表示/違反報告)
ロイ - すんごくよかったです！ワンピースの作品を読んだのは初めてなんですけど、面白かったです！夢主ちゃんの優しいところがすごく好きです！ありがとうございます！ (9月2日 12時) (レス) @page50 id: 97a54b5f8a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - 何年も前に読んだこの作品の内容をふと思い出して、必死に検索し続けてようやく再会出来ました。最後に読んでからこんなに年月が経っているのに、また読みたいと思わせてくれるような作品を作ってくれて本当にありがとうございます (8月7日 0時) (レス) @page50 id: 0f8f6ed9fd (このIDを非表示/違反報告)
いぶき(プロフ) - 凄く感動しました、エースとオヤジを生存させてくれてありがとうございます (2023年3月23日 7時) (レス) id: d33577c241 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちチーズ
| 作成日時：2018年2月3日 9時
