【刀剣乱舞】妖物語 (ページ13)

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106.怨嗟ページ13

前田.

「……全て、貴女達人間のせいです。心さえ持たなければこんな感情を持つこともなかった」

そう言うと主君の顔が一気に歪む。

「一兄が表に出てこなくなったのも人間のせいだ。前代がいた頃は笑顔を見せてくれたのに」

『……私は』

「＂悪くない＂……とでも言いたいのですか？」

『違っ……！』

「だから違くないんです！！」

また塞がりつつあった主君の頬を斬りつける。

何度傷つけても残らない傷に苛立つ。あの時の審神者は傷の治りが遅くて出血が止まらなかったというのに。

「何故貴女のような人間がのうのうと生きているのですか？僕達を不幸にする人間なんていなくなればいい。僕達兄弟をバラバラにするような奴もこの世からいなくなればいい」

『……っ』

「……こんな、苦しくて息が詰まるような感情なんて最初から持たなければ良かったんですよ……僕にとって＂消滅＂は救いなんですよ」

刹那、体温がある手が僕の手を握り締めた。

主君を見ると大粒の涙を流していた。幼い顔がより一層幼くなるその顔を僕は何度も見たことがある。

『……消滅が救いだとか、そんな悲しいこと言わないでよ！』

「っ！」

すると主君の隠れていた片目が露わになり、流れてくる強い霊力に耐えきれなくて、すぐさま主君から離れる。

上半身を起こした主は泣きながら目を伏せた。

『……私はいつも貴方達を傷つけてばかりだ』

「同情、ですか？」

『同情なら……私は、とっくの昔に貴方達を責めているよ。こんな事に巻き込んだ加州さんを恨むし、私の身体を斬った薬研くんや厚くんを刀解してる』

「主君……」

『っでも出来ないよ！最終的にはみんな私のこと助けてくれるから……恩返ししたいのに恩は積み重なっていくばかりだし……っ……前田くんが大好きな人なら……尚更、彼らを刀解することなんて私には到底無理なことなんだよ……！？』

……ああ、そういえばこの人間

「(どうしようもなく優しい方だった)」

その優しさに絆された刀剣が一体どれ程いたのだろうか。

演練の時も戦績より傷ついた刀剣を真っ先に心配をしていた。今剣くんに何度暴言を言われたとしても怒りもせずただ受け入れて謝るだけだった。

『……私が主で、ごめんなさい』

主君は何度も袖で涙を拭いながら言った。

僕はその場から動けないでいた。

泣き叫ぶことなく静かに嗚咽を漏らしながら顔を両手で覆って泣く主君をただ見ることだけしか出来なかった。

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