87.刀物語 其ノ漆 ページ41
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五虎退
『(さっきから視線を感じるような……)』
自室で宿題をしていると部屋のいたる所から視線を感じる。
いや、気のせいではなく本当に。
被害妄想とか自意識過剰とかそんな虚しいことではなく、本当にいたる所から視線を感じるのだ。
たとえば押入れ、花が生けてある大きな花瓶、障子の裏、天井、作業机の下。
……ん?作業机の下?
私は恐る恐る作業机の下を覗くと見たことある白い虎が私の膝に頬を擦り寄せながら喉を鳴らす。
『五虎退くんの……虎?』
私がそう言ったのを合図かのように押入れ中から、花瓶の中から、障子の裏から、天井裏から一斉に虎が私に向かって飛びかかってきた。
『え』
白くて柔らかくて温かい生き物が私を襲う。
私は体勢を崩し、後ろに倒れこむと廊下から足音が聞こえた。
「あるじさま、僕の虎さん達しりませ、ん……か」
部屋の出入り口である方向を見ると五虎退くんが今の私を見て目を張った後、顔色をどんどん青ざめていく。
五虎退くんの虎達は私の手に頬を擦り寄せていたら私の頬を舐めたり私のお腹の上に乗って身体を丸めたりと甘えてきてる。どうやら懐かれたらしい。
それは嬉しいことなのだが、暑いし身動きが取れなくて苦しい。
『ご、五虎退くん……たす、け、て……』
「あるじさまぁぁぁああ……っ!」
刹那、私の伸ばした手を掴んで五虎退くんが引っ張るが予想以上の強い力で私は五虎退くんに抱きとめられる。
『わっ……』
「あ、あるじさま!大丈夫ですか?お怪我とか」
『う、うん……大丈夫だよ……?』
なんだこの状況
姉弟でもない二人が隙間なく抱き締められるという絵面は非常に血の気が引く状況ではないだろうか。
二人目の審神者は短刀の子達に性的に手を出していたみたいだし私は身の危険を感じる前に五虎退くんから離れる。
「本当に大丈夫ですか……?」
『私は全然平気だよ!それより重かったよね!?』
「……重い?」
『えっと……私』
「……全然重くなかったですよ?」
本当に言ってるのかキョトンとした顔で首を傾げる五虎退くん。
『でも女の人の身体触るとか嫌だったよね……?』
「……少し、怖かったですけど……何故だか身体が最初に動いてしまったんです」
『……そっか、ありがとう』
「あるじさまを助けるためなら、僕は触れる恐怖すら忘れてしまうのかもしれませんね」
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冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい!楽しみにしてます!! (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬雪 | 作成日時:2019年5月20日 21時