84.主 ページ38
堀川.
一度、寝返りを打って目を開ける。
上半身を起こして兄弟達の寝ている姿を見て、布団から出る。
寝間着から内番服に着替えて、兄弟達が起きないように静かに布団を畳んで押し入れに仕舞い、物音を立てないように部屋から出て玄関に向かう。
「(生かされてるんだなぁ……)」
昨日の出来事が嘘みたいに、僕はいつものような朝を迎えていることに驚きさえも感じる。
「おはよ」
「……安定くん」
「気分、どう？」
「……いつも通り、かな」
縁側の通路を歩いていると、庭で素振りをしている安定くんと骨喰くんに出くわしてしまった。
「……精が出るね」
「僕達はこの本丸の中で一番弱いからね。早く戦場に出れるように鍛錬は怠ることは出来ないからね」
「��かんすと��を目指す」
……凄いなぁ
そういえば、こんな風にゆっくり朝を迎えるなんてあの子のおかげなのかもしれない。
あの人が主だった時は休む暇もなく戦場だったから朝日を温かいと思うのも小鳥の囀りや鶏の鳴き声をちゃんと聴いたのは初めてかもしれない。
「堀川」
「なに？骨喰くん」
「あんたが思う主は誰だ？」
「え……？」
「あんたを顕現した主か、あんたを救った主か」
骨喰くんは意外と意地悪だ。
そんなの迷ってしまうに決まっている。僕を顕現してくれたのは紛れもなくあの人で。でも僕を救ってくれたのはあの子で。僕にとっては二人共、主だ。
「別にどっちでもいいんじゃない？」
安定くんが言う。
「僕にとっての主は沖田くんだけれど、現世の主はあの子だ」
「でも……」
「堀川にとっては二人が主なんでしょ？それでいいじゃん」
「……それで、いいのかな……」
「前代に顕現された清光達は二代目の主を受け入れるのと同じだからいいんじゃないの？」
「……そっか」
あんな屑な人でさえも僕は主と思っている。
……でも、これだけは言える
「……骨喰くん、僕を顕現した人も主で、僕を救ってくれた人も主と、僕は思っているよ」
「……そうか」
「でもね」
「？」
「僕は、今の主さんが好き」
呼んでもちゃんと振り向いてくれるところも、こんな僕でも手を差し伸べてくれるところも、僕を必要としてくれるところも全部好きなんだ。
「……変なの」
「え、何か言った？安定くん」
「なんでもないよ」
安定くんから何かボソッと聞こえ、聞き返したけれど、本人は笑って誤魔化した。
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冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (
レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！！ (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年5月20日 21時
