82.闇に呑まれるな ページ36
.
『ずっと……？』
「人間も闇に呑まれると聞く。どうか……どうか主殿だけは闇に呑まれないでほしい。絶望しないでほしい」
……もしも、人間が闇に呑まれたらどうなる？
三人目の審神者みたいに無我夢中になってしまうことか、二人目の審神者みたいに何もかもに手を出してしまうことか、一人目の審神者みたいに自分で死の道を選んでしまうことか。
絶望するな、なんて難しい話だよ
誰だって何かには絶望するし、私だっていつ絶望したり闇に堕ちるかわからない。
でも、山伏さんの顔を見るとどう答えていいのか解らない。
「あまりそいつを困らせるな兄弟」
すると山伏さんの手の上に手を乗せたのは山姥切さんだった。
『山姥切さん……』
「人間誰しも前代のように善人でもない」
「兄弟……」
「それに……前代だって、一度だけ、闇に堕ちたことがある」
山姥切さんの言葉に私は目を張る。
『(お爺ちゃんが……？)』
「……話はここまでだ。兄弟、加州が呼んでいた」
「お、おう……そうか」
すると山伏さんは私の手を離すと廊下の奥へ消えてしまった。
『……山姥切さん』
「……気になるか？」
『……はい』
「昔のことだ」
私は立ち上がり、歩き始める山姥切さんの後を追いながら山姥切さんの話に耳を傾ける。
「まだ山伏が来ていない頃、前代は闇に堕ちた」
『ど、どうしてですか……？』
「所有していた刀が一振り、折れたからだ」
一瞬立ち止まりそうになってしまう。
「どうしようもなく優しい男だったから、その刀のために何日も泣いては政府への怒りも膨れ上がっていった」
『政府に、ですか？』
「折れた一振りは短刀だった。こんな小さな子供を戦場に出すのか、と前代は理不尽に苛まれていた」
たしかに、短刀は見た目は本当に子供だ。政府からの説明の時、こんな小さな子達も戦場に出すのかと理解した時、私は悩んだ。本当に私は審神者をやっていいのかと。
「前代は苦しんだ。だから闇に堕ちた。穢れた」
『穢れたって……』
「兄弟と同じように��人ならざる者��になろうとしていた」
その話を聞いた時、私はやっと立ち止まることが出来た。
歩きながらこの話を聞くには少し聞き辛い。
山姥切さんが言うようにお爺ちゃんがどうしようもなく優しいかったというのなら、きっとそうなってしまうと思う。
仕方が、ないと思う。
「そんな前代を救ったのが、お前の婆さんだった」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (
レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！！ (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冬雪
| 作成日時：2019年5月20日 21時
