70.誰も報われない ページ24
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山姥切さんの言葉に思考が止まる。
「三人目の審神者のことは聞いているか？」
『……はい』
「あいつは本当に屑だった。最初はあいつの初期刀が折れて資材にされてしまったんだ。次は大和守安定が資材、そして俺が瀕死状態の時に資材にされそうになったんだ」
『……っ』
「堀川は頑張っていた。誰よりも。あいつの期待に応えようと、あいつに振り向いてもらおうと」
山姥切さんは無表情で淡々と話す。山伏さんも落ち着いて、目を伏せて黙って話を聞いている。
……私は今、どんな顔してるだろ
「でも、そんなわけなかった」
『え……』
「言っただろ？屑だったって」
『あ……』
「俺が刀解された後は詳しくは知らん。だがあいつがこの本丸に来て、一番苦しんでいたのはたしかに兄弟だった」
堀川さんの傷が予想以上に深すぎた。
そして山伏さんは目を開けて、私を見ると、一瞬だけ目を張り、そして困ったように笑った。
「主殿は優しいな」
『え？』
「気づいておられないのか？主殿、涙が流れておられるぞ」
自分の顔を触ると、たしかに頬が濡れている。
なんで今泣くんだ私。これでは同情していると思われるし本当に泣き虫な女だと思われてしまう。
それなのに気づいてしまうと、もう止まらない。溢れてしまう。
『……ごめん、なさい……っ』
「何故謝るんだ」
『三人目のことはわかっていた筈なのに……そんなこと、知ってしまったら……っ』
「……それは、同情か？」
『違います！ただ、ただただ申し訳ないんです！私達人間が貴方達を不幸にしているって知ったら……誰だって、人を恨んでしまうじゃないですか……』
とめどめなく溢れてくる涙で視界が滲む。
『私、凄く不躾でした……堀川さんに、貴方は、人間になってしまったんですって、言ってしまったんです……っ……これでは堀川さん、報われないじゃないですか……！』
堀川さんは三人目のために頑張ってきた。でももう三人目はこの世にはいないのだ。頑張ってきた意味が、幸せになるための糧がなくなってしまった。
「あんな屑でも、兄弟はずっと主だと思っている」
『……だと、思いました……っ』
「しかし兄弟だけが報われないわけじゃない」
『え……』
「俺達、刀剣男士は誰も報われないんだ。どれだけ頑張ったとしても、どれだけ相手のことを想っていたとしても、俺達は報われない。それが俺達の末路みたいなものだ」
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冬雪(プロフ) - たまごやきさん» コメントありがとうございます。毎回題名が変わる小説ですがこれからも読んでいただけると幸いです (2019年6月9日 9時) (
レス) id: 319301ee3c (このIDを非表示/違反報告)
たまごやき - こんにちは。今までコメントしていなかったのですが、いつも作者様の作品を読ませて頂いてます。あんスタの方から読み始めたのですが、どちらもとても引き込まれてしまいとても好きです。これからも作者様のペースで更新してくださると嬉しいです。 (2019年6月9日 9時) (レス) id: 7f42fd7b15 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 幸別愛友さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年5月25日 15時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - すごくいいお話です…(*´^-^`*) その文章能力わけてほしいくらいです…(>д<。) これからも更新頑張って下さい！楽しみにしてます！！ (2019年5月25日 12時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 瑠花さん» 他人が作ってしまうと自分が作った物語が思い通りにいかなくなります。誰も語彙力がないことを馬鹿になんてしませんよ。馬鹿にする方が馬鹿なんですから (2019年5月24日 22時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年5月20日 21時
