【あんスタ】ハーバリウム《２》 (ページ8)

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56.斎宮宗ページ8

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高校生の技術ではない。

そんなことを言ってしまえばこの物語は先へと進まないだろうし即終了となるだろう。

鬼龍紅郎と斎宮宗は本当に高校生なのか

彼らが施した衣装のデザイン画を今一度凝視するが繊細な刺繍に匠と化している技術。なんでこうも彼らは＂天才＂なのだろうか、そんな風に考えながら誰も居なくなった教室でただ一人僕は残っていた。

……僕がもしこんな綺麗な服を自分の手で作れたら母さんは着てくれるだろうか

しかし世の中そんなに甘くない。

『弟子入り……無理か』

〈何が無理なの？〉

『え』

顎に手を当てて呟くと頭上から聞こえた声に反応し顔を上げると片手に＂マドモアゼル＂を抱いて眉間に皺を寄せた斎宮宗が立っていたのだ。

『なんだマドさんか。僕はてっきり放課後に出るという血まみれの女幽霊かと思ってしまったぞ』

〈あらあら、それは驚かせてしまったわね〉

『いや、これは一瞬でもマドさんのことを幽霊だと思ってしまった僕が悪いんだ』

決して僕はイタイ奴ではない。

斎宮宗は親しくない人間に対して腹話術、マドモアゼルを通して喋るのだ。なんとも面倒臭い人間ではあるが彼は＂元奇人＂な故に天才なのだ。悪くは言えないのだ。

〈あら、そのデザイン画……〉

『鬼龍先輩と斎宮先輩が施した衣装のデザイン画』

〈やっぱり……でもなんで見ていたの？〉

『斎宮宗は本当に人間なのか、と考えていた』

斎宮宗の方を見て言えば彼の目尻がピクリと動いたのが見えた。

「……口を慎むのだよ小娘」

『やっと喋ってくれましたか斎宮先輩』

「……まさか僕を嵌めたというのかね？」

『マドさんと話すのはとても楽しいですけれど僕は斎宮先輩と話がしたいんですよ。人間が人間の言葉を喋るなんて最も人間らしい行いと思いませんか？少なくとも僕はそう思いますよ、斎宮先輩』

「僕はお前の方が人間じゃないんじゃないかって疑いたいのだよ」

『僕は人間ですよ。先輩と同じように息をして体温を持ち、血だって流れてますし。先輩と違うところなんて身長や体重、声の高さ髪の色など。違うところは沢山ありますけれど僕は先輩と同じ人間なんですよ』

教室の中を自由に動き回りながらそう言えば斎宮宗は意外にも僕の言葉に耳を傾けていたのか酷く長い溜息を吐いた。

「やはりお前は理解できないのだよ、小娘」

『僕は小娘じゃないですよ斎宮先輩。僕には花野Aという立派な名前があるんですから』

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