33.誰かの過去 ページ35
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私は暫くそこに立って、景色に見惚れていた。
優しい風、鳥達の優しい囀り、揺れる植物。それらを感じ、これ程までに優しい世界は初めてかもしれない。
この世界はたしかに誰かの��過去��だった
「……あの子が審神者になりたいって言ってた」
「あんたの孫か？」
「うん。あんま俺は気が進まないんだけどな」
まずそこに私がいて、目の前には渋い色の羽織を着た男の人と少し汚れた布を着て金色の髪を揺らす男の人二人が縁側に座っていた。
私はたしか山姥切さんを助けようとして屋根の上から落ちた筈なのに、なんで私はこんな所にいるのだろう。
『(これも審神者の力……？)』
「もしあの子が審神者になった時や何か危ない事に巻き込まれそうになった時はお前が助けてやってくれよな」
「は？なんで俺なんだ」
「え、普通そこは��主命とあらば��って引き受けるところだろ」
「俺は長谷部じゃない。山姥切だ」
『(！)』
山姥切さんだ
「そもそもお前の初期刀は加州だろ？加州に頼め」
「加州は他の仕事を頼んだからいーの」
「写しの俺にそんなの務まるわけないだろ」
「務まる務まる。なんせ俺の刀だから」
「話にならん」
そう言って山姥切さんは立ち上がって何処かへ行ってしまい、取り残された羽織を着た男の人は「え、まんばちゃん反抗期なの？」と、どうやらメンタルが強めのようだ。
すると、男の人は私の方に振り返った。
『(……あれ、この人)』
見たことある
何処かで、絶対。見たことがある。
「あんな感じで山姥切は素直ではないが必ずお前のことは守ってくれる筈だよ」
『(……誰だっけ)』
「俺はお前のこと最後まで守ってやれないが」
『(私……)』
「今は守ってやれる」
『(この人のこと、知ってる……)』
その時、ぐらりと視界が揺らめいて、感じたことのない酷いノイズが私の頭の中を支配した。
「A」
雑音だらけの世界の中でその声だけが鮮明に、真っ直ぐに届く。
『(なんで？)』
顔を上げると男の人は眩しいくらいに微笑んだ。
私はその笑顔を知っている。私はその声を知っている。私は、この人のことを知っている。
「おいでA、爺ちゃんが抱き締めてやろう！」
刹那、私の目から涙が溢れ落ちる。
消えていく。
雑音もモザイクも。
私の世界から消えていく
そして私を追い越した影は男の人に飛びつく。それはたしかに小さい頃の私で、男の人に嬉しそうに抱きついた。
お爺ちゃん、と呼んで
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ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (
レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです！ (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月29日 9時
