31.何が大切か ページ33
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刹那、背後から足音が聞こえた。
「アンタ達山姥切の刃先を探してるの？」
振り向くと加州さんが立っていた。
『加州さん！』
「ちょっ、今までどこ行ってたのさ！」
「仕方ないでしょ？堀川に審神者の手助けをしないようにって縄でグルグル巻きにされたんだから」
「え、じゃあ自力で脱出したの？」
「前の主の初期刀ナメんなってーの」
加州さんが来てくれて安堵する。
私は加州さんの傍に行こうとした刹那、身体に宙に浮く。デジャヴではあったけれど鯰尾くんより乱暴だった。
「やっと見つけたぞ、審神者」
『！』
今度は担がれたと思ったら私はその声を覚えていて顔を上げれば案の定三日月さんが私を見下していたのです。
「なっ、三日月の爺さん！」
「少し預からせてもらうぞ」
『加州さん！』
「主！！」
加州さんと私は手を伸ばすがそれは空振り、私は三日月さんに担がれたまま鍛刀場から出て何故か屋根の上へと身軽にジャンプしていく。すると私は降ろされ、三日月さんは離れた場所まで歩くと袖の中から刃先を取り出した。
『……それは』
「山姥切の刃先だ」
……あった
あれが山姥切さんの刃先。折れているというのにここからでも綺麗だということがわかる。
しかし三日月さんはその刃先を屋根の上から落とそうとする。
『な、なんで……』
「審神者よ、お主は何が大切だと思う」
『え……』
「出世か名誉か。金か富か。世界か愛か。強い奴か弱い奴か。自分が大切か刀剣男士が大切か」
三日月さんは狡い人だ。私は何も知らない。知らないから何も選べない。
強い風が吹く。その拍子に隠れていた片目が、塞がれていた視界がクリアになる。
『私は今が大切です』
「！」
『出世も名誉もあっても無駄です。お金か富なんて選べません。世界か愛を選ぶなんて世界を選んで愛を掴んだ方がいいです。強い人か弱い人を選ぶなら弱い人を選んで強くします。刀剣男士か自分を選ぶのだとしたらそれは時と場合によります』
「そんないい加減な回答は求めていないぞ」
『なら大切にしてほしいと言いたいならそう言ってくれないとわからないじゃないですか！」
「！」
『じゃないとわかりません。私は鈍いからもっと伝わらないと思いますし時には貴方達の気持ちを汲めない時があると思うんです』
いつの間にか外に出ていた他の刀剣男士達が下から私達を凝視しているのが視界の端に映った。
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ぬっこ(プロフ) - 胸から刀を出すと言う表現がとても素敵です。続き楽しみにしてます(^-^) (2020年1月15日 21時) (
レス) id: da10b377d5 (このIDを非表示/違反報告)
冬雪(プロフ) - 紫鶯さん» ありがとうございます。続きをお楽しみください。 (2019年5月16日 20時) (レス) id: 13dcdbbff5 (このIDを非表示/違反報告)
紫鶯 - とっても面白かったです！ (2019年5月16日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月29日 9時
