花の庭 ページ5
些細なことで喧嘩をした。
それは日常茶飯事なのだが、今回は少しいつもと違った。
普段は１日２日で仲直りをするのだが、もうすでに１週間は経っている。長期戦である。
きっかけは些細なことであった。Aが三島と二人きりで遊びに行ったことである。
Aは、昔の友人に会いたくなるのは仕方のないことだから許して欲しいと訴えた。しかし梅野はそれを許すことができなかった。
(１週間、まるまる口をきいていないな)
謝ろうかとも思ったが、「いやいや｣とAは首を振った。
(俺は悪くないだろう。浮気をしているわけじゃないんだし)
正直に言うと、梅野が怒っている理由がAにはよくわからなかった。
実を言えば梅野が「三島がAと一緒にいるのは嫌だ｣と言って泣いた時、Aは彼の涙の理由を理解してはいなかったのだ。
ただ、それっぽい言葉で梅野を一時的になだめただけである。
(くそ、どうしろというんだ)
＊
「…しんどい｣
８日目、さっそくAは梅野不足に陥った。
かといって、自分の意志を曲げるのはいやだった。梅野の気持ちがわからないのにごまかしたことも、今では良くないことだったと思った。
(相手の気持ちが理解できないのに謝っても、何の意味もない)
気づけば、一日中梅野のことを考えていた。
スケッチブックの彼を見つめながら、Aはため息をついた。
(俺は、梅野の何を見ていたんだろう)
Aは、ゆっくりと目を閉じた。
今では本人を見ずとも、梅野の目、鼻、唇、…顔立ちの全てを鮮明に脳裏に描くことができる。
(覚えるほどたくさん見ているし、そこにいるかのように思い出せるのに)
彼は時折、Aには理解できない。
(梅野が今怒っている理由だけじゃない。梅野には、まだよくわからない所がたくさんある…)
Aは、梅野をもっと知りたいと思った。
その綺麗な容姿の奥に潜む生々しさに、もっと触れたかった。
梅野の嫉妬がうれしいと思った。もっと彼の欲を見たいと思った。
けれど、彼の怒る理由の根本がわからないため、彼の心の深い所にはたどり着けていない。
(梅野の怒る理由を知りたい。梅野の全部を知りたい。俺は──)
(梅野の全てがほしい)
＊
「…で、その相談を私にするってわけ？相当無神経なの、わかってる？｣
「ああ｣
「はあ…｣
三島は露骨に呆れた様子で、ティースプーンでくるくるとセイロンティーをかき混ぜた。
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すらいみーる@元もちづき(プロフ) - 以前からぺぺこさんの作品を読ませて頂いているのですが、すごくおもしろくて更新とても楽しみにしてます！！！これからもぺぺこさんの一ファンとして応援してます！ (2018年9月11日 23時) (
レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺぺこ | 作成日時：2018年4月14日 21時
