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ため息をついて、再び携帯に目を落とした。しかし、父親からの連絡はない。
梅野はつい、小さなあくびをした。
(…暇だな)
すると、不意に勢いよく教室の戸が開いた。
梅野がびっくりして振り返ると、そこに立っていたのがAだったので、さらにびっくりした。
(──どうして、きみが)
刹那、時が止まったようだった。
(来て、くれたのか)
梅野は胸が詰まったように苦しくなり、涙で視界が歪むのがわかった。
けれど、ここで泣くまいとぐっとこらえて、声を絞り出した。
「A…どうして」
(僕はきみを怒らせたんじゃないのか。また無自覚に傷つけたんじゃないのか。──そんな僕に、どうして会いにきたんだ)
「間に合った…」
ほっとしたように言ったAがふらふらと歩み寄ってきたが、走ってここまで来てくれたのか、次にはとても苦しそうに屈みこんだ。梅野は思わずAの背中をさすった。
「大丈夫かい」
「ああ、…少し、待ってくれ」
ややあって、Aが体をおこした。それから梅野の目をまっすぐに見つめて言った。
「ごめん。──あの時は、本当に悪かった」
(どうして、Aが謝るんだ。悪いのは僕なのに)
少し驚きはしたが、梅野があの時Aに言われたことで傷ついたのは事実なので、素直にこたえた。
「もういいよ」
「…転校、するって?」
「うん」
「どこに引っ越すんだ?」
「根室」
「…遠いな」
「うん。遠いよ、本当に…」
梅野は実感を込めて言った。昨日地図を眺めながら、その距離の長さにさんざん憂鬱になったのだ。
(もう、会おうと思っても、簡単に会うことはできないだろう)
しばしの別れを考えただけで、梅野はまた涙が込み上げるのを感じた。
(いけない、泣いては)
梅野は、逆光になった夕日が涙を隠してくれることを祈った。
(ああ、やっぱり僕は……)
梅野があらためて自身の思いを揺るぎないものと感じ取った時、Aが尋ねてきた。
「連絡先、教えてくれるか」
「うん」
携帯電話を操作しながら、梅野はつよく思った。
(…こんなものでつながっていたって、意味がない。直接言葉を交わしあっていたい。Aに、僕をずっと描いていてほしいんだ)
(離れてしまうなんて、ぜったいに嫌だ)

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すらいみーる@元もちづき(プロフ) - 以前からぺぺこさんの作品を読ませて頂いているのですが、すごくおもしろくて更新とても楽しみにしてます!!!これからもぺぺこさんの一ファンとして応援してます! (2018年9月11日 23時) (レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2018年4月14日 21時

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