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キス ページ1

Aが冗談を言うと、梅野は白い歯を見せて笑った。
(こんなつまらないことで、笑ってくれる)
そう思うと堪らなくなって、Aは梅野に近づいて顔を寄せた。
「今日、これで何回目なの…」
梅野はくすくすと笑いながら、わざとらしくチュッと音をたててキスに応じた。
「仕方ないだろう?」
こんなにかわいくてきれいな子が、自分のことを好きなのだ。自分を抑えられないのもしょうがないとAは思う。
もう一度キスをしようとAが梅野に近づくと、彼はそっと目を閉じた。
(──あ、きれいだ)
Aは思わず動きを止めた。止めて、床に置いてあったスケッチブックを手繰り寄せて開いた。ついでにペンも拾い上げて握った。
そしてさあ描き出そうという時、キスを待っていた梅野が目を開いた。
「…まだ?」
「あ、ごめん」
「って、なんでスケッチブックを持っているのさ」
「描こうと思って…かわいかったから」
「さすがにそれはひどいよ」
梅野は口を尖らせた。それを見て、Aは更に言った。
「なあ、そのむくれた顔も描いていい?」
梅野はAにデコピンをした。
「いてっ」
「もう、今日は描いちゃだめ」
「そんなぁ」
面白くなったので、Aはもう少し梅野をつっついてみた。
「…梅野、悪かった。梅野がそんなにキスしたがってたなんて、気がつかなかったんだ」
「はあ?」
梅野は呆れたような声を出した。
「してきたのはそっちでしょ」
「でも、嫌がらなかっただろ」
「してほしいなんて言ってないもん」
「…ふうん。そうか、わかった」
Aは試すように言った。
「じゃあ今から、一生梅野にキスしないことにするぞ。いいのか?」
「勝手にして」
梅野はぷいとそっぽを向いてしまった。
それきり彼が黙りこんだので、Aも梅野に背を向けて、床にスケッチブックを開いた。
そうしてAがしばらく自分の絵を眺めていると、不意に背中に何かがトンと寄りかかった。
「…梅野、どうかしたか?」
Aはやさしく尋ねた。
「…あの、ちょっと…一生というのは、困る、かも…」
もごもごと喋る梅野がおかしくて、Aは微笑みながら彼を振り返った。
「うん、俺も、かなり困る」
それを見た梅野も、つられたように笑った。
「自分から言い出したくせに…」
二人は笑いながら、もう一度キスをした。

**

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すらいみーる@元もちづき(プロフ) - 以前からぺぺこさんの作品を読ませて頂いているのですが、すごくおもしろくて更新とても楽しみにしてます!!!これからもぺぺこさんの一ファンとして応援してます! (2018年9月11日 23時) (レス) id: 3b52443fef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぺこ | 作成日時:2018年4月14日 21時

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