*微笑みの悪魔 ページ45
.
「生憎だが、俺は片手だけでも戦えるんでね。それに、こいつは俺の……俺たちのもんだ。お前さんなんかに渡してたまるかってンだ」
西山にそう言っている声は、夢でもなんでもなく、阿伏兎さんで、頭をよぎった一欠片の幼き思い出の、あの人も阿伏兎さんだった……
ひとつの線で結ばった物は、一瞬にして私を懐かしい気持ちにさせてくれた。
落ちないように、力強く抱き締めてくれている、阿伏兎さんの服を軽く握ると、静かに涙を流した。
……が、それも束の間。
相手方の残った残党が私たちの周りを囲み、向こう側にいる、小太兄と神威さんも襲ってくる敵を倒し始めた。
阿伏兎さんも、西山と蹴りをつけるために、片手で立ち向かっていっていた。
でも、片手じゃ無理なのか、汗を垂らして荒い息を吐きながら、戦っている阿伏兎さんを見て苦しくなった私。
そんな時、小太兄の背後を狙う敵が見えた。本人は全く気付いておらず、すぐにでも襲われる!!
……そう思ったら最後。
着物に隠していた短刀を、その敵に向かって投げつけると、血が吹き出て小太兄にかかり、彼が振り向いて敵に刺さった短刀を見るなり、目を見開いて私のことを見た。
「オイオイ……目覚めたのかい?Aちゃん」
上から、疲れきった、でも優しい声で言ってくる阿伏兎さんに、弱々しく笑うと助けられてばかりじゃいられない。
そう思って、阿伏兎さんを勢いよく突き飛ばし、フラフラになりながら自分の足でしっかりと立つと、敵を倒しながら、見てくる小太兄と神威さんが。
「おや。目覚めましたか、プリンセス」
「…えぇ……目覚め、たわよ……」
「こちら側に、来てくれる決心がお付きで?」
「……んなわけ……ない……っ、でしょ……ゲホッ……」
「A!!無茶するな!!」
小太兄の声を聞きながら、そばに落ちていた敵が持っていた刀を拾うと、着物で返り血を拭いて構えた。
「小太兄や……神威さん、を……わたし、の……初恋相手を、傷つけるなんて……ゆる、さない……っ!!」
「そんなボロボロな身体で、何が出来ると。自分で自分を殺す気か」
「大切な人を……守れるなら、っ……命を犠牲にしたって……構わないっ!!」
「Aちゃん……」
「それ、に……そこら、辺にいる……ゲホッ、ゲホッ……奴らより……私は、強いん、だから……」
「……っ!おまえ……ま、まさか……
し、白夜叉も恐れたという……微笑みの、悪魔……」
「……参るっっっ!!!」
*初恋相手 【銀時side】→←*懐かしい記憶 【あなたside】
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
rikohuku0428(プロフ) - 続きのパスワードが知りたいです!面白いのでぜひお願いします! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 4dacac16ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:どこかのムスメ | 作成日時:2018年8月23日 12時