*惚れた女【阿伏兎side】 ページ38
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団長からの話で仕事にならなくなった俺は、マントを羽織り、返しそびれたハンカチを懐にしまい船を降りた。
昼間とは違い、夜になり涼しいかぶき町を傘をささずに歩いていると、前から影が入った。
「団長」
「1人でどこ行くの」
「あいつの家だ。もしかしたらいるかもしれねぇからな」
「で、いなかったら1人で探しに行こうっていう事だね」
「団長……」
「俺も行くよ。そんな美味しい話、俺を差し置いくなんて、阿伏兎も酷いことするもんだ。殺しちゃうゾ」
あの笑みを浮かべ言った団長に、俺は長いため息を吐くと、団長の横を通り過ぎた。
「勝手にしやがれ、このスットコドッコイ」
「は〜い」
横に団長を携え、Aちゃんの家の前に着くも、まだ帰っていないのか灯りが無く真っ暗。
「まだ帰ってないみたいだね〜
どうする?阿伏兎。あのお侍さんの所に行ってみる?」
「……団長はそれでいいのか」
「まぁね。だって、それしか手がないじゃないか」
「…ま、そりゃそうだ」
家を後に、あの銀髪侍がやってるなんでも屋に向かっていると、急に団長が走り出し誰かに向かって飛び蹴りを。
「オイオイ……団長
……って、そういうことか」
「何するアルか!」
「あれ?間違えた?」
「間違えた?じゃないネ!バカ兄貴!!」
「うるさいなぁ」
「団長、それぐらいにしておけよ。」
「お前ら、何しに来たアルか。また何か企んでるアルか」
「人聞きの悪いこと言わないでよ。俺じゃなくて、阿伏兎が用あるんだよ。
お侍さんの所に案内してくれる?」
「嫌アル。A姉をたぶらかす男なんて絶対近づかせないネ」
「たぶらかすってねぇ……」
「ていうか、A姉に用事アルなら帰るヨロシ。」
「何かあったのか」
「見合い相手に連れ去られたんだヨ。
ま、お前らには関係ない事ネ」
「連れ去られた?
だってよ、阿伏兎。どうする?」
「嬢ちゃん、とりあえず案内してくれや」
「……ぜっっったいに、嫌ア……っ!!」
「あらら」
強情を張る女に思わず、力任せに壁に押し付けた。
「は……はな、せ……」
「教えろ。今すぐに」
「り、理由を……教える、アル!」
「理由?決まってるじゃねぇか。
あいつに……無駄に優しいあいつに、惚れちまったんだ、俺ァ。」
「っ!!お、お前……」
「惚れた女を守って、何が悪いってんだ」
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rikohuku0428(プロフ) - 続きのパスワードが知りたいです!面白いのでぜひお願いします! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 4dacac16ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どこかのムスメ | 作成日時:2018年8月23日 12時