*夕空からの距離 【あなたside】 ページ19
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神威さんに言われ、家までの距離を阿伏兎さんと歩いているんだけど……
会話がない
恐ろしいほど沈黙が続いてて、頭の中でどうしようと考えていると、偶然綺麗な夕空が見えたせいか、思わず
「綺麗な夕空……」
「え?」
……言っちゃった……
思わず、ポロッと言葉が……
横にいる阿伏兎さんは、怪訝そうな顔で傘を傾け空を見上げると、少しの沈黙から見上げたまま答えてくれた。
「たしかに、こりゃまた、綺麗な夕空だ」
そういった阿伏兎さんは、なんだかカッコよく見えて……
そして、途端に騒がしくなる胸の音に、抑えるように、片手でギュッと着物の裾を握りしめた。
「お前さんは」
「……はい」
「なんで、俺なんかを助けたんだ?」
「……え?」
不意の質問に戸惑った私は、立ち止まって阿伏兎さんの後ろ姿を見つめると、彼も視線を感じたのか、首だけ振り返った。
「ずっと気になっててな。夜兎族だって分かってたなら、自然に傷が治ることも知ってたはず。
なのに、どうしてわざわざ助けたのか」
「……昔を、思い出して、つい。」
「昔?」
「はい。
この話、少し長くなるんですけど、聞きます?」
「お前さんが良ければ。俺は、暇なもんでね」
ニヤッと笑ったその姿が、やけに様になっていて……
そして、近くの公園のベンチに移動してくると、気を利かせて阿伏兎さんが私に飲み物を買ってきてくれた。
「ありがとうございます、飲み物まで……」
「それで?昔、なんかあったのか?」
「……私、兄がいるんです。
兄は、友人達と私で、攘夷戦争に参加しました。その時、少し相手方厄介な敵で、私たち側にたくさんの負傷者を作ってしまって……
私も治療に参加したんですけど、その中に友人の1人が居なくて。
外に出てみたら、この前の阿伏兎さんと同じように、引き戸に身体を預けて気を失ってるその人がいて。」
「じゃあ、あん時、お前さんはその友人の1人とやらと、俺を重ねたっつーわけか」
「はい。夜兎族って分かっていたけど、つい足が動いてしまって……」
正直に打ち明けると、阿伏兎さんはフッと笑って水をグビっと飲んだ。
「気持ち悪かったろ?」
「気持ち悪い……?」
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rikohuku0428(プロフ) - 続きのパスワードが知りたいです!面白いのでぜひお願いします! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 4dacac16ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どこかのムスメ | 作成日時:2018年8月23日 12時