*重症だな 【阿伏兎side】 ページ15
.
「……兎……伏兎……阿伏兎ってば!!」
「っ!!あ、あぁ、団長か」
「団長かじゃないよ、ねぇ、どうしちゃったの?ぼーっとしちゃってさ。
地球行ってから、なんかおかしいよ?いつも死んだ魚みたいな目してんのに、今じゃ、みたいなじゃなくて、ほんとに死んでた魚の目だよ」
「おいおい……やめてくれや、そんなこと言うの。」
「まぁ、いいや。来週、商談があるからまた地球に行くからネ。」
「そうか。」
「今度は長いよ。1ヶ月だから。それまでに、書類片付けちゃってネ」
じゃ、よろしく〜……呑気に仕事を全部押し付け去っていった第七師団の団長。
そんな後ろ姿を見送ると、俺は部屋から見える、真っ暗な景色にため息をついた。
「どうしちまったのかねぇ、俺は一体」
あの日。
怪我をしたあの日から、俺が考えているのは、手当をしてくれた “ あの女 ” だった。
何をしても……そう、書類を片付けているときだって、団長の尻拭いをしてる時だって、戦ってる時だって、ずっとあいつの顔が頭から離れない。
それに、あの時感じた、嬉しそうに微笑んだあいつを見た時のやけに煩い心臓の音……。
過去に女との付き合いはあったものの、あそこまでなる女は、32年間生きてきて初めての体験だった。
「……一目惚れ……しちまったのか、俺は」
「一目惚れ??誰々?」
「だ、だんちょ……驚かすなよ……心臓に悪いぜ」
急に居なくなったはずの団長が、俺の横から顔を出しやがったおかげで、危うく書類を1枚ダメにするところだったぜ……
「で?誰?あの阿伏兎が、人の話に耳もかさないで、夢中になってる奴は。強いの?天人?」
「地球人だよ。強い……さぁ、どうだろうな」
「へぇ〜、地球人か。俺にもいるよ。侍に夢中だ」
「男じゃねぇ、女だ」
「……こりゃまた珍しいね、阿伏兎が女に目をつけるなんて。」
そんな驚くことかねぇ、全く……
まぁ、確かに、普段の俺だったら考えらんない事だな。団長が驚くのも無理ねぇや
なんて思って、押し付けられた仕事を片そうと始めるも、椅子の向きを返させられ、団長と目線があった俺は、そこから質問攻めに合うことになった。
……頼むから、仕事をさせてくれ、団長
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
rikohuku0428(プロフ) - 続きのパスワードが知りたいです!面白いのでぜひお願いします! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 4dacac16ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:どこかのムスメ | 作成日時:2018年8月23日 12時