敵うわけがない 高杉side ページ9
…Aをもう一度傍に置くためなら。もう一度Aを手に入れるためなら、手段を選ばないつもりでいた。何としてでも。何を失ってでも、Aを俺の傍に置いて、これから先アイツを護り続けるのだと。そんなことを俺は考えていた。自分の手にあるものはすべて惜しむことなく使って、Aをここに。鬼兵隊に繋ぎ止めようとしていた。その駒が、鬼兵隊の人間だ。俺はAを手に入れるために、自らが率いる組織を利用した。それにより組織に降りかかる膨大な被害なんてすぐに想像がつくのに、俺はそれでも鬼兵隊を利用していたのだ。どれだけの被害があろうと、Aが居るならそれでいい。病的なまでにそう考えていた。
Aを失うかもしれないという可能性に怯えるあまり、色々なことを見逃していた。表面的なことにすら、意識が向いていなかったのだ。
俺にとって、鬼兵隊とは何なのか。俺自身も、よく分からなくなってしまった。10年前にあった鬼兵隊とは違う組織。それはまるで、過去の残骸のようだ。けれど同時に、今の鬼兵隊だ。きっと、なくてはならないものなのだろうと、そう思う。そして、それを、Aは知っていたのだろう。きっと俺よりも、Aは知っていたのだ。
…Aの居場所が真選組になったように。俺の居場所が、ここなのだ。
「奴は言っていたぞ。拙者らに、お前と一緒に居てくれて『ありがとう』、とな」
『…斬れる訳がないでしょ』
『…晋助の傍には、アンタ達が居た』
『…だから、ありがとう、晋助の傍に居てくれて』
Aと会話をしたときのことを思い出しているのか、万斎は笑いをまた転がしている。その横で、ソイツとAが言葉を交わしあっているのを想像して、それがなんだかおかしくて笑えてきてしまった。今日はよく笑う日だ。
「まったく、敵うわけがなかったでござるな」
「…あァ、その通りだ」
「おや、肯定してくれるか、珍しいこともあるものでござる」
否定する要素も見つからなかった。頷くしかない。認めるしかない。それに、俺はずっと昔から、20年前から知っていたのだ。アイツは馬鹿みたいに真っ直ぐで純粋で優しくて、強いのだということを。願望に、幻想に取りつかれていた俺には見えなかった、当たり前のことだった。
…敵うわけがない。勝てるわけがない。当然じゃないか。
『私は、自分が歩く道を人に決められるのが、』
『──何よりも嫌いなんだよ』
…俺は、赤坂Aのそんな真っ直ぐさを、愛しているのだから。
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月14日 19時