大物 ページ43
*
…目を覚ました切っ掛けは、目覚まし時計の音でも、庭で地面をつついては可愛らしい声で鳴く小鳥の鳴き声でもなく。朝っぱらにも関わらず無遠慮で暴力的な音量で屯所内に響き渡った爆発音であった。きっと屯所で眠っていた者はその音のために眠りの世界から無理矢理に引き剥がされたことだろう。もしかしたら、この近隣に住んでいる住民たちも。そして私もその一人であった。時計が見えないし見るために起き上がる気力もないので時刻は分からないけれど、まだ起床時間ではないことはなんとなく分かった。あるいはそれは、起きたくないという私の願望が作り出した感覚だったかもしれないけれど。爆発音の次の瞬間の悲痛な叫び声も、バッチリと耳にしていた。あぁ、これはまた近所の人からいい加減にしろとクレームがくることだろう。
うんざりとしながらに私はそう思い、きっとそれは何かとタイミングが悪く、ことごとく私を含む上司達に面倒事を押しつられるザキが担当することになるのだろうとも思った。可哀想だが、それは地味なザキが背負いし仕方のないものなので、私にはどうしようもないものだった。それに、私がザキの肩代わりをするなんてこともしない。何故なら面倒臭いからである。面倒事は誰を犠牲にしても回避する。要領よく生きていくのは大切なことだと私は思う。
そして、そんな音のために叩き起こされた私は納得がいかず、そのまま起きる気にはなれなかったため、もう一度目を閉じては二度寝をした。小鳥の声で目を覚ますならともかく、物騒な爆発音で起こされる朝なんて受け付けていない。土方さんが丸焦げになっていようと、沖田くんがバズーカを担いで悪意の満ちた笑みを浮かべていようと、私には関係のないことだった。
そして、次に起きたときにはそろそろ起きても良いかなという時間になっていた。けれど私は思い出す。そういえば、今日は朝から見回りではなかっただろうかと。私は慌てて飛び起き、机に置いてある控え目な大きさの置時計を凝視した。それは7時を指しており、いつもならその時間帯に起きるのだけれど見回りがある日にはもう着替え終わり、身支度を済ませて屯所の門前に居なければいけない時間であった。
そして一緒に市中見回りに出る相方は、私の直属の上司であり、この間もうひとつ特別な名前のついた関係が追加された人であった。分かりやすくいうのなら、先程の爆発音の被害者である人物だった。
「……おっと」
こりゃヤバイと言いつつも、青褪めることがないというところが、私が大物である証である。
620人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年6月14日 19時