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初めてだった ページ41

…タバコを摘まんでいたはずの土方さんの右手は、私の後頭部に回されて、それに引き寄せられるままに、私は彼に身を預けた。程なくして彼の左手が、私の背中に回ってくる。大きくて逞しくて、誰にも負けない強さを持っているその手は、けれどとても繊細に、私に触れてくれている。私は、強く手を握られたくらいで壊れたりしないのに。強く抱き締められたくらいで粉々になったりしないのに、彼はいつもそうやって、細心の注意を払っているみたいに何処かで怯えながらに、私に触れてくれる。それでも、離れてしまわないように、切実な強さで。タバコが混じっている彼のにおいを吸い込みながら、私は彼の胸板に顔を埋めては、彼の背中に私も腕を回した。大きな背中に手を回すのは一苦労だった。

…暖かくて、苦くて優しいにおいがして、彼の心臓の音が聞こえて、それに合わせるように私の心臓も動いていて。幸せで幸せで、涙が出そうになる。けれど、彼の着物を濡らすわけにもいかないので、目をギュッと閉じてはひたすらに幸せを受け止めていた。受け止めきれなくなりそうで、ちょっと困ってしまうくらいだ。受け止める場所がいっぱいになってしまったら、溢れたものが涙になってしまうだろうから。

隙間なく抱き締めあいながら、彼の体温を感じながら、私はくぐもった声を発する。泣きそうな湿った声を、誤魔化すように。


「信じてくれないと困りますよ、…私から、するの、初めてだったんですから」

「…ッ」


彼に押し付けた額に彼の大きな鼓動が響いてくることはなかったのだけれど、彼の心臓はきっと今、彼の体内に血液を送り込んだのだろう。そんな気配が、した。

思えば、そう。キスはしたことがあっても、自分からしたことはなかった。晋助からのそれを受け入れることはあっても、することはなかった。だから、この行動が私にとってどれだけ勇気を必要とすることだったか。


「…そう、か……」

「そうですよ、だからちゃんと信じてくれないと、もう殴りますからね」

「いや信じた!!信じたから!!!」


土方さんの背中に回してあった右手を一度離して握り拳を作って見せれば、彼は慌てたようにそう言って、満足して頷いて、私はまた右手を彼の背中に戻して、着物をキュッと握った。土方さんが私の髪をとくように撫でて、あまりに優しげなその手付きに、思わず顔が綻んでしまう。顔の筋肉すらもその幸せに役目を放棄してしまったかのように。

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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月14日 19時

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