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すぐに気付けるように ページ37

きっと私からなんの話があるのか、何を告げられるのか、想像もしていなかったのだろう土方さんは、それから少しの間目を点にさせて何処か、屯所の庭の一点を見つめていた。そこに先程私が彼に伝えた言葉達を並べて、わざわざ繋ぎ直してそれらの意味を理解しようと試行錯誤しているかのように。黙々と煙を宙に浮かばせているタバコを口に咥えたまま放置しているので、ちゃんと灰を落とさないと風か何かの拍子にボロリと落下してしまいそうだった。彼の足は裸足なので、素足に灰が当たってしまったら熱いだろうなと。ちょっとだけ心配になり声をかけようかと優しい私は思うのだけれど、土方さんは私が口を開く前に「なァ、」と呟く。

その声に、私は喉にでかかっていた言葉を飲み込んだ。彼の声を聞いたのは十数秒ぶりのことなのだろうけれど、緊張して時間の感覚が鈍っているのか、酷く長い沈黙に思えていた。

戸惑いや躊躇いが彼の中にはきっとあって、それをなんとか押し止めるように小さく息を吸っては吐いて、それから私の方に視線を向けた。何かの感情に、私には分かり得ない複雑な色をしたそれに、彼の目は揺らいでいるように見えた。「なんですか?」と、私は問い掛ける。

土方さんは指でタバコを摘まんでは、口にする。未だに混乱を抱えているような声で。


「…その……もう、大丈夫なのか」


…その言葉について、何のことですかと問い掛ける必要もなく私は理解した。主語なんて必要がなかった。なんせ、昨日の今日なのだから。そんな質問は愚問という奴だ。

彼は、晋助のことについて言っているのだろう。そして、それは私の告白に対する彼の逃げ道のためのものなんかでも、誤魔化しのものなんかでもなく、純粋に、誠実に、私のことを心配してくれているのだということを、私はしっかりと感じていた。

あれだけ晋助のことを想っていて、そのためだけに何もかもを捨てたように歩いてきて、この場所にも足を踏み入れたのだから。そのことを、彼は完全ではなくとも分かってくれているから。私のことを分かった上で、寄り掛かれるような存在になってくれると言ってくれたのだから。そんな彼が、自分のためだけにこんなことを言うはずがないのだ。

私は彼の優しさに溢れすぎた言葉に、目を細めながらに彼を見つめた。私のことを、切実な目で見つめてくれている彼のことを。


…きっと、私が強がって本当の心を隠していたとしても、すぐに気付けるように、彼は真っ直ぐに私を見つめているのだ。

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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月14日 19時

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