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似合わねーよ ページ25

私は、銀時の言葉を聞いて、数秒という間を置いてからゆっくりと、恐る恐るというように顔を上げた。この頭を本当に上げていいのか、まだまだ足りないんじゃないか。そう思う。きっと、足りていない。いくら頭を下げたって、いくら謝罪の言葉を口にしたって、いくら地面に額を擦り付けたって、足りることなどない。私はそれだけのことをしたのだ。けれど、銀時は顔を上げろと言う。ちゃんと前を見ろと言う。だから、顔を上げて、前を見た。銀時が望んでいないことを、これ以上したくはない。着物を掴んでいる手のひらに力が込められて、シワが出来ていく。そんなことは、どうだってよかった。視線を上げた先。銀時は、気だるげな目の色の中に、確かなぬくもりを纏わせていた。

…慰めている訳でもなく。哀れんでいる訳でもなく。暖かな目を、私に向けていた。その目はまるで、家族を亡くした私に、あの人が。松陽が向けてくれた目のようで、目の奥が痛みを帯びた。あの人とコイツはかけ離れているのに、どうして重なって見えてしまうのだろう。

銀時は続ける。私の目を見据えて、それでいいんだと微笑むように笑って。


『いつだって俺達は、何があっても足を止めることなく、馬鹿みてーに真っ直ぐに前見て進んでいくお前の姿に、励まされてたんだよ、多分』


うつむくとこなんざ、似合わねーよ、と。そう言っては、私の頭から手を離した。私は奥歯を噛み締めて、涙が出そうなのを必死に堪えた。今ここで泣き出したら、きっと銀時を困らせる。銀時は、私がめそめそ泣くことを、望んではいないだろう。ぐいっと腕で目元を拭っては、不敵に。いつものようにを心掛けて、私は笑って見せた。『…あのねぇ、』と。


『馬鹿みてーにって余計なのよ。何よ、ドイツもコイツも馬鹿馬鹿って。いい?馬鹿って言った方が馬鹿なのよ』

『はいはい』

『それに、多分って何なのよハッキリしなさいよ。励まされてたのそうじゃないの?』

『ハゲマサレテマシタ』

『棒読み!!』


…まったく。私の幼馴染は、どうしてこんなにも優しいのだろうか。殴ってくれたって良かったのに。何てことないように軽々しく私を救うようなことを言ってのけて、簡単に私を許して、そうかと思えばまた何もなかったかのように私達はこうしていつものように下らないことを言い合っている。励まされているのは、銀時達だけじゃない。私の方が絶対に、励まされている。


…銀時や小太郎、辰馬に、晋助。アイツらに囲まれていた私は、アイツらに出会うことの出来た私は、これ以上ないくらいに、恵まれていたのだろう。

感謝してる→←ちゃんと



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月14日 19時

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