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反動 ページ20

…土方さんは微かな笑みを浮かべたままに、私の隣に腰掛けた。いつものように少しだけ距離を空けて。近すぎず、遠すぎない心地いい距離で。彼はこういう、距離感の取り方がうまい。彼が空気が読めること人だということは、彼と一緒に過ごしてきた時間で知っていることだけれど、まるで意図的にそうしているように見せずに、自然な動きで相手を気遣うことが出来る人なのだ。本当に。相手のことをよく見ていて、その対象に適した接し方をナチュラルにやってのける。必要な時以外は、相手が避けたがる話題をちゃんと察して避けてくれる。そういったことが私は、辰馬ほどではないけれど苦手だと思う。いや、絶対に辰馬よりかは出来るけれど。というか比べる相手を間違えたか。兎に角、だからこそ彼のそういうところにはすごいなと思うし、素直に尊敬もする。けれど。

…今は、その距離感がなんだか寂しかったりもして。


離れていたせいだろう。なんだか、出来るだけ彼の近くに居たかった。彼の体温を感じられるくらいのところに居たかった。手を伸ばしたら簡単に触れられる距離に居るのに、どうしてこんなに、心細くなってしまうのだろう。隣に彼が居ることだけで十分なのに、今まで会えなかった反動でか、少しだけワガママになってしまっているようだ。そんな自分に、内心で呆れるように溜め息をついた。


「…どうかしたか?」

「え、」

「なんか……不安げに見えたっつーか…」


悲しそうっつーか…と、彼は言葉を濁らせながらにゴニョゴニョとそう呟いた。私ではなく前方の庭に視線は向いていて、彼の右手はなんだか落ち着かないという風に自身のうなじを撫でていた。そんな彼を横目に見据えては、また心配をかけてしまったと、不安げで悲しげな表情をしていた数秒前の自分を責めるような気持ちになる。

…本当に、彼はよく見ていてくれる。私のひとつひとつの変化に、すぐに気付いてくれる。不謹慎な奴だなと言われてしまいそうだけれど、私はちょっとだけ嬉しくなってしまって、クスクスと小さく笑ってしまう。


「……何笑ってんだよ」

「いえ、ごめんなさい」


距離感が寂しいとか、もっと近くに来てくださいとか、そんなことを言ったら困らせてしまうことは目に見えていたので、言わないことにした。困った顔をする土方さんを見るのも一興だけれど、そこはグッと堪えて。


「なんでもないんです。ただ、身体の方は大丈夫ですか?」


と、私は今も問い掛ける。本当の理由は隠したけれど、そのことを気にしていたのは本当のことだった。

私だけなら→←言い忘れ



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月14日 19時

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