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埋め合わせ ページ18

Aside


『…何もかも、やるべきことがすべて終わったら。そうしたら、』
『…約束の埋め合わせを、させてくれませんか?』


昨日の夜。車に揺られながらに私はそう土方さんに告げて、一週間と数日前の約束を改めてやり直させてもらうことにした。土方さんは躊躇うことも、迷うこともなくすぐに頷いて、『待ってるよ』と言ってくれた。土方さんならそう言って頷いてくれることはわかっていたけれど、断られることはよっぽどのことがない限りないだろうと思ってはいたけれど、それでもその言葉を聞いて、私はどうしようもなく安心してしまった。果たすことの叶わなかった約束がまだちゃんと私達の中に残っていたことに、きっと安心したのだと思う。その約束がまだあるのだと思っているのが私だけではないのだということを認識できたことが、嬉しかったのだと思う。

晋助に連れ去られる直前。それよりも数時間前に、私と土方さんは敗者が勝者の望みをなんでも聞くという条件を伴った剣道の勝負をした。私は土方さんに敗北し、土方さんの望みを叶えることになった。そして彼は、私にこう言ったのだ。『お前の望みを叶えてやるよ』と。だから、私は言った。土方さんの時間を、少しだけ私のためにくださいと。話したいことがあるのだと。彼はそれに頷き、その瞬間、それは約束として成立した。

そうして私達は、一度目の約束をしたのだ。


だから、私はこうして待ち合わせ場所の、私の部屋の前の縁側に腰かけて彼を待っている。私が呼び出しているのに彼をここまで来させるようでなんだか悪いことをしたかもしれない、と。そんなことを今更ながらに思った。けれど、私はこれから、大事な話をするつもりで、その言葉を伝えるのなら、この場所でがいいと、そう思ったのだ。ごめんなさい、と内心で小さく謝りながら、それでも、彼がここにやって来てくれることを心待ちにしていた。


…縁側から見上げる月は、昨日と同じく満月で、その光を眺めては、私は音にはせずに、彼の名前を呼んだ。今、この月を並んで見ていたいと一番に思える人の名前を。夜風がふいて、それがまだ思っていたよりも冷たくて、少しだけ身震いをした。すると。


「…あ、」


木製の床が軋むような音が貸微かに聞こえてきて、私はその方向に視線を向けた。そうして、彼を見つけた。ゆっくりと、黒い着流しを身に纏って歩いてくる、彼の姿。


「こんばんは」

「…おう」


…私を目に映すなり、何故か肩を撫で下ろすような、そんな動作が似合うような表情を彼は見せて。きっともう必要のない心配をしていたのだと思った。

言い忘れ→←冷たい絶望が 土方side



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設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組、攘夷   
作品ジャンル:アニメ
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Karin(プロフ) - この作品が好きすぎてもう4回ぐらい読み返してます。とっても面白くて、感動的で、大好きな作品です!銀魂のedにも使われていた桜音という曲を聴いた時に、この作品の高杉と主人公のことみたいだなぁと感じました。高杉と恋仲だった頃の話も見てみたくなりました笑 (8月4日 19時) (レス) id: 9e7f4b97d1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ありがとうございます!こんなご時世ですので暇をもて余すこともあるかと思いますが、私の作品なんかで良ければ読んでやってください!! (2020年5月9日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - ピピコさん» 嬉しいです!楽しみに待ってます(o^^o)その間ピピコさんの小説何度も読み返しますね笑 (2020年5月9日 21時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ミウラさん» ミウラさん!ありがとうございます…!!最後まで読んでくださり感謝です…!!高杉さんが出てくるシーンは本当に難しかったです…自分でも書いててしんどかった…!!高杉さんのお話もそのうち書きたいなぁと思っていますのでお楽しみに(o^−^o) (2020年5月9日 19時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 一気に全巻読めちゃうくらい面白かったです!晋助様のシーンがしんどすぎてずっと泣いてました…笑次は晋助様落ちの小説も書いて欲しいです! (2020年5月9日 8時) (レス) id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月14日 19時

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