◆ Lemon 7 ページ7
俺の頭は全く状況に追いつかなくて、声を出すことも体を動かすことも出来ない。
り｢先生...何してんの｣
｢少しだけこうさせて｣
り｢俺....｣
｢少しだけ｣
そう言うと、さらにギューッと強く俺のことを抱きしめる。
心臓はこれでもかというくらいドクドクとすごいスピードで動いてて、先生に伝わったら恥ずかしい。
そこから先生は何も言わず、俺の胸にずっと顔を埋めていた。
｢りょうくん｣
り｢何ですか？｣
｢1度だけでいいから｣
り｢...｣
｢抱きしめて｣
暗闇で何も見えなかったけど、顔は埋めたままなんだろう、声がこもって聞こえる。
俺は先生に、振り回されっぱなしだ。
でも、そんなこと言われたらね、
り｢これでいい？｣
こんなこといいわけない。
俺は生徒、先生は先生だ。
そんなの、子供の俺でもわかる。
｢りょうくんほっそいね｣
り｢なんで今そんなこと｣
｢言いたかったから｣
り｢先生は...｣
俺も先生と同じようにギューッとしている腕で先生の背をなぞってみた。
細くもなく、もちろん太っているわけでもなく、女の人らしいふわふわした体型。
り｢残酷だね｣
先生は俺の気持ちに気づいてるんでしょ？
だからこうして遊ぶんだよね？
こんなことして俺をまた好きにさせるんだ。
｢ごめんね｣
ほら、このごめんねが全てを表している。
俺のことなんてなんとも思ってないって言ってる。
｢こんなことしちゃって｣
俺は何も言い返すことができず、抱きしめていた腕をすっと離すと、ドアを開けて部屋を出た。
こんなに苦しいのは初めてだ。
こんなに近くにいるのに、先生は遠い。
口の中にはまだ酸っぱいレモンの香りが残っていた。
俺は部屋の外で、中にいる先生のことを想って、少し泣いた。
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年7月5日 21時
