＃43 展開が早い。 ページ43
車を返却して、フライトの時間までのんびり空港内をグルグルする。
俺としては、目標は完全に達成出来たし文句無しのいい旅行だった。
彼女にとってはどうだろう。
未だに俺のシャツを着たままの彼女は俺の顔を見上げると｢ん？｣って首をかしげた。
｢なんかさみしいね、終わっちゃうみたいで｣
｢始まったんだから終わっちゃうのはしょうがないよー｣
ゴロゴロとスーツケースが転がる音が響く。
繋ぐ手をゆらゆら揺らして楽しそうに歩く彼女はまたなにか当たり前だけど大事なことを言おうとしている。
｢でもきっと岡崎に着いたらまたなにかが始まるから楽しみだね！｣
｢何が始まんの？｣
意地悪してそんなことを聞いてみると、少し上を向いて真剣に考える彼女。
｢んー....同棲？｣
｢ふっ...展開早いね？｣
｢明日見に行こう！！｣
｢明日は撮影でーす｣
｢私もお仕事でーす！！｣
｢なんだよー！｣
もう、可愛すぎるんだよ。
俺は明日にでもAちゃんと暮らしたいと思ってるけど、彼女もそうだったなんてね。
｢おーい！！｣
俺の家族にお土産買うのを忘れてて、Aちゃんと｢やっぱりちんすこう？｣とか一緒に選んでいるといやーな声が聞こえた。
｢あ！！｣
｢Aちゃん、リアクションしちゃダメだよ？｣
その声の主はもう誰か分かってるから、後ろを振り向かずにAちゃんの手を取る。
こいつらの相手なんてしてたら最後の最後までふたりの旅行が台無しだ。
Aちゃんが｢ほんとにいいの？｣って不安そうにしてるのを無視して、店を出ようとした時。
｢ねえねえとしみつ！！｣
｢おおおっ！びっくりしたなぁ...｣
｢ねえ！やばいじゃん！！｣
後ろで｢おーい！！｣って言いながら着いてくるてつやに気を取られてて、目の前に現れたりょうのことなんて全く見えてなかった。
何がやばいのか全く頭が追いつかなくて｢は？｣って言ったんだけど、りょうがむけるスマホの画面を見てそれは撤回した。
｢としみつ彼女説がやばい！！｣
｢えっ？！｣
驚いたのは俺ではなくAちゃんで、りょうからスマホを奪い取るとTwitterの画面をするすると動かしてツイートたちをすごいスピードで目で追う。
« としみつらしき人が女の子と手繋いで歩いてたんだけど本物？ちなみに沖縄ね»
こんなツイートから始まったそれは大盛り上がりもいいところでした。
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年9月12日 12時
