＃34 手を引く。 ページ34
いつもは無意識に俺が1歩前を歩いてて、こっちだよって君の手を引いてる。
でも今日は違う。
君が3歩くらい前を歩いてて、それは別に逃げたりしないのに｢早く早く｣って手を引いてる。
｢なんでそんなに急いでんの？｣
｢だって早く行きたいんだもん！｣
｢水族館はいつ行っても同じように受け入れてくれるよ？｣
｢なら早く行って受けれられたい！！｣
ほんとに水族館好きなんだなぁ。
俺も動物園に比べたらすきだけど、こんな焦っていくほどではない。
あ、靴ひもほどけた。
ズルズルと引きずってダサいけどまあいいか。
ここでAちゃんを止めるのもかわいそうだし。
｢ん？どしたの？｣
急にAちゃんの足が止まったから、何事かと思ったら｢としくんほどけてるよ！！結んで！｣って靴を指さしてる。
気づいてくれたんだ。
｢Aちゃん急いでるからほっときゃいいやって思ってたわ｣
急いで靴紐を結んで、そう言うと、Aちゃんの手を引く力が少し弱くなった。
｢私そんなにがっついえ見えた？！やだー！！｣
｢ううん、楽しみにしてくれてるんだなあって思った！｣
｢ならよかったあ...｣
ホッと肩を撫で下ろす。
がっついてても可愛いし、何してても可愛いんだけどさ。
その安心しきってる顔も可愛い。
入場券をGETして、イルカショーの時間を確認してルート通りに回ることに決めるとマップをしまって手を繋ぐ。
1年くらい前の俺に教えてあげたい。
あの日少し距離があった彼女と、手を繋いで水族館行けるよって。
そして付き合ってからも変わらず可愛いよって。
｢あ！いた！！｣
｢え？｣
｢りょうくん！！｣
イルカショーの会場は、この前行ったそこの倍くらい広くて人も当然多い。
その中から、誰かを見つけたらしいAちゃんはそこを指さしてニコッと笑う。
一番いい席やんって思えるほどど真ん中でこっちに手を振ってるのは、ド田舎に間違えて生まれてきたイタリア人...じゃなくてりょう。
正直いって、あいつらに邪魔されてるということよりこれが嫌だった。
りょうはきっと...きっとじゃないか。
Aちゃんのこと好きなん...だよね。
｢ありがとう！ずっといたの？｣
こっちの心配なんて全く知らないAちゃんは手を繋いだままずかずかとそっちに向かって歩いていく。
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年9月12日 12時
