＃17 飛び込みたい。 ページ17
部屋に戻って、なんとなくテレビの電源を入れて明日行く予定のところをAちゃんに本でペラペラ見せると｢綺麗だね｣ってすごく嬉しそう。
俺の頭は露天風呂にどう誘うかでいっぱいだったから、そんなことは全然なかったんだけど。
Aちゃんはきっとそんなこと1ミリも考えてないから、少し眠たそうに小さく欠伸をした。
｢眠たい？｣
｢んー...はしゃぎすぎちゃったみたい｣
｢もう寝よか？｣
そんなにがっついてもしょうがない。
お風呂は朝早起きして俺一人で適当に入ろう。
｢ううん、もうちょっととしくんとお話してたい｣
｢え、可愛すぎじゃんそれ｣
｢なんか飲み物買いに行こ？｣
｢お茶買ったじゃん、さっき｣
もう2本ともちゃんと冷蔵庫に入れたのに、｢違う違うー！お酒！！｣って言いながら立ち上がって｢行こ？｣って手を差し出す。
飲むんですか、この状況で飲ませるんですか。
こんなに可愛い顔してんのに、試練しか与えない悪魔ですね。
｢ん、行こっか｣
ほんとに買ってしまった。
Aちゃんは言い出しっぺなのにそんなに強くないジュースみたいなのを買ってたけど、俺は普通にビール数本をGETした。
部屋に帰って飲みながら、テレビを見たりちょっとちょっかい出してキスしてみたり。
｢としくん？｣
｢ん？｣
｢ちょっと顔赤くなった｣
｢ちょっといい感じに酔ってんのかもね｣
全然自分ではそういう感じしないけど。
ふわふわした気分ではある。
今すぐAちゃんの手を取ってそのガラスの向こうへ飛び込みたい気分ではある。
あ、これは酔ったせいじゃねぇや。
｢Aちゃん｣
｢なあに？｣
ごろんとAちゃんの膝を枕にして寝っ転がると、ちょっと驚いた顔をしたあとにっこりと笑った。
この角度から見ても可愛い。
そのまま身体を横向きにして、腕を背中に回す。
顔をお腹に埋めてもAちゃんのいつものいい匂いはないけど、ふわふわは変わらない。
｢としくん？｣
｢なあに？｣
顔を埋めたまま喋ったからめちゃくちゃ声こもってる。
｢お風呂入ろっか？｣
｢え？｣
｢一緒に入る？そこ｣
一瞬その言葉が頭の中でうまく処理できなくて、そこと言いながら指さしている彼女の指の先を見ると、たしかに俺が行きたかったガラスの先。
｢まじで？！｣
｢まじで、です｣
勢いよく身体を起こしたら、腕を机にガンってぶつけてかなり痛かった。
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作者名：Ma
| 作成日時：2018年9月12日 12時
