検索窓
今日:3 hit、昨日:14 hit、合計:34,434 hit

零時 -he- ページ3

【…ごめんね。】






響いた、静寂に。




彼女の小さくて細い身体に、まるで吸い込まれるように。









落ちた、彼女の髪が。




さらり、音はたっていなかったけれど、そんな風に。





表情の読めない横顔に髪が掛かって余計に、読めない。


不意に彼女は顔をあげて。

【そっか。】


そう、口角をあげた。



強がりな彼女の精一杯。



それを分かっていながら、別れを告げる俺は、
彼女にどう映っていただろうか。



隣に座る彼女は、真っ直ぐに


怖いほど綺麗な月を見て


長いまつ毛をそっと伏せた。





____綺麗だ。





酷く綺麗で、透けて消えてしまいそうで。

抱き締めたい、引き寄せたい









胸が苦しくなって俯く。


こんな時、何を話したらいいのか
言葉が出てこないことに、苛立ちが走る。



彼女も俺も口数は少ない方だった。


でも彼女との過去を思い出せば、笑顔の瞬間しかでてこない。




そういえば、彼女は泣いていたことがあっただろうか。

少なくとも、俺は見た事がない。






「樹さん。」



聞き慣れた声が鼓膜を揺らす。

そういえば彼女も最初は俺を樹さんって呼んでたな、なんて考えて

声を出すのを忘れていた。


「…樹さん!!」

さっきより強めに名前を呼ばれて、我に返る。


樹「…慎」


す、っと通った鼻筋に綺麗な黒い目

整った顔立ちが俺を覗き込んでいた。




慎「何回呼んでも気づかないから。」


樹「ああ、ごめん、」



慎「…何でですか? 」


樹「…………え?」



いまだ整理しきれていない頭のせいか、
彼の問の意味が分からない。



慎「Aさんの事ですよ。どうして。あんなお互い好きだって、」



樹「慎。」


慎「、はい?」



言い聞かせるように、だけど強い口調で。


彼は僅かに、身じろいだ。




樹「得る物があれば失う物もあるのがこの世界だから。」




その一言に全てを込めて彼に伝えた。

彼は、それを飲み込んだ。





慎「分かってます、でも。ちゃんと、話せば皆、」


樹「じゃあ、慎が幸せにしてあげて。」


慎「何言ってんすか、だってあの人は樹さんだけを好きで、ずっとっ!!」





慎の目は、苦手だ。

彼女の目に似ている。見透かすような、読めない瞳。



樹「いつか、分かるよ。」

呟いて何か言いたげな彼を残して背を向けた。




瞳からは、らしくもない、生暖かい何かが零れた。

STAR→←零時



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (52 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
185人がお気に入り
設定タグ:THERAMPAGE , RAMPAGE , LDH   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ルーヴ(プロフ) - 秋さん» はじめまして! All dayを拝読頂き、ならびにご指摘ありがとうございます! こちらの二点、修正完了致しました! 隙間時間に書いていることもあり、誤字が多くお恥ずかしい限りです…。これからも何かありましたらご指摘感想、宜しくお願い致します! (2019年12月11日 16時) (レス) id: 2dc1554635 (このIDを非表示/違反報告)
- 続けてのコメントですみません(>_<) 物語読んでいて気が付いたのですが...。 引き寄せてのここの台詞 彰吾「…恋愛は禁止。今の時点で絶対に。それが無かったとしても、俺はあいつに相談相手でありたいの。」 これ正しくは俺はあいつの相談相手ではないんでしょうか? (2019年12月11日 15時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
- こんにちは(*^^*) はじめまして。 物語読んでいて気が付いたのですが...。 零時のここの部分 愛した彼の名前を読んだ声は、 これ正しくは名前を呼んだではないんでしょうか? (2019年12月11日 15時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ルーヴ | 作成日時:2019年11月12日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。