◇ ページ19
うって変わってあれから一年後。
きんときもようやっとパパが様になってきて、料理も難なくこなせるくらいには上達した。ただ、私の退院が遅くなってしまったため彼には迷惑をかけただろう。
それでもきんときは私に笑顔を向けてくれた。
「命張って俺との子を産んでくれたんでしょ？ これ以上望むものなんて何も無いよ。」
出産してから一週間後くらいの時、彼は私にそんな言葉をくれた。大好きな人と結婚して、そんな彼との子供が生まれて。確かにこれ以上幸せになったら大変そう、なんて苦笑いした。
「いーと、いとい、」
『そうだねぇ。きんときだよ〜。』
どうやらうちの息子は動画が大好きなようで。映像で流れるきんときに向かって指をさす。そして最近発するようになった言葉を紡いで彼の呼ぼうとするのだ。可愛いことこの上ない。
「いと、まぁ？」
『まぁ…？ あ、まだ？って聞いてるのか。きんときはまだ帰らないよ〜。ご飯の買い出し行ってるからね。』
それまでママと遊んでようねぇ、と言いながら彼の帰りを待つ。するとドアがガチャンと鳴った。
「ただいま〜。」
『おかえり。ほら、パパが帰ってきたよ。』
「んーまっ！」
『よしよし、抱っこしていこうね。』
息子を抱きかかえて玄関まで迎えに行く。きんときはこちらを見るとにっこりと微笑んで私と息子の頭をポンポンと撫でた。
「お出迎えありがとう。」
『さっきまでパパの動画見てたんだよねぇ。』
「あはは、なんか恥ずかしいなぁ…。」
きんときは照れながらも喜んでいるらしく、ニヤけが隠しきれていない。確かに自分の息子が動画見るなんて思ってなかっただろうし。
「今日の夜ご飯は麻婆豆腐ですよ〜。」
『やった！』
「んぅ、？」
『はいはい君は離乳食ですよ〜。』
息子を寝かせてから二人でキッチンに立つ。こういう時間が本当に幸せだと感じる。
「…ふふ。」
『どうしたの？』
「幸せが溢れちゃった。」
彼はそう呟いて私の頬にキスを落としてきた。今日も我が家は幸せが詰まっている。
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これにて出産＆その後シリーズ終了です。これ系のリクエストが一番多かったかもですね。リク下さった皆様、ありがとうございました✨
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作者名：モチモチな餅。
| 作成日時：2022年2月13日 22時
