【オリオンの刻印】間違えて日本代表に選ばれちゃった系女子、世界を相手に奮闘する。その２

その４９：ベンチは俺に任せろ ページ4

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その後も相変わらず練習らしい練習はしないまま、どんどん時は流れてゆき、気がつけばあっという間にオーストラリア戦当日となってしまった。


この数日間のほたるの生活の地味さたるや、何か特筆することがあるとすれば、氷浦から嬉しそうに「無敵ヶ原富士丸の名前が偽名であることを暴いた話」を報告されたことくらいである。

──韓国戦前の無敵ヶ原富士丸の一件以来、心なしか二人が次第に仲を深めていっているような気がするという話は、また日を改めてするとしよう。




「頑張れみんなー！ 太陽のサタンだかなんだか知らないけど、力見せつけたれー！！」

「おお、なんだ。今日はやけに楽しそうだな、ほたる」

「まあね、砂木沼くん。開始早々控えメンバーで、私は心底安心してるよ！」



ほたるが砂木沼に答えた通り、今回の試合において彼女は「開始早々ベンチ」という本人にとってはたいへん好都合の状況に置かれている。

それ故に「素人丸出しの醜態晒しちゃったらどうしよう」と試合に対して様々なことを危惧する必要がないため、今日の彼女のテンションはいつも以上にに高いのだ。



「ほら、試合に出ない=(イコール)ヘマをせずに済むってことでしょ。サッカード素人で試合が近づくたびに胃を痛めてる私にとっては、これほど喜ばしいことはないよ！」

「ああ、なるほどな。ベンチにいることを喜ぶだなんて随分と変わったヤツだなと思っていたが、そういえばお前はサッカーの経験がないのだったか」



納得したように頷き、愉快そうに笑う砂木沼。

ほたるは内心「こちとら全然笑えねーよ」と苦虫を噛み潰したような顔をしながらも、「私のせいでみんなが負けちゃうのは嫌だしね」と本心なのかそうでないのかよく分からないことを言っていた。




「この前のお前のプレーを見るに、お前も世界と渡り合えるだけの能力はそこそこ持っているように思えるが」

「あれは偶然だからなあ。今の私が試合なんかに出たら、みんなの足を引っ張ること間違いなしだよ」

その５０：基本的に言語変換能力が乏しい→←その４８：素人の言うことはそう簡単に信じるもんじゃない

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