【オリオンの刻印】間違えて日本代表に選ばれちゃった系女子、世界を相手に奮闘する。その３

その１２１：世の中に無駄なことなんて一つもない ページ29

「頑張れーっ、一星ー！！」


円堂の声援に、一星ははっと顔を上げる。

「──どんなことがあろうと、忘れるな。ここには、オレたち仲間がいる。チームがある。ここが、お前のいる場所だ」

かつて、人知れず彼が円堂に言われた言葉。円堂のその言葉は、たしかに一星の心に届いていた。



「くよくよすんなって、一星くん！ 一星くんは私に興味を抱かれちゃったラッキーボーイなんだからさ。もっと胸を張って、顔を上げて！」


ほたるの激励に、一星は目を見開く。

「──今私が一番興味あるのは、豪炎寺くんたちをどうにかした犯人が誰かじゃない。何よりも一星くん自身に興味があるから、その好奇心を満たすためにこうして話しかけてるだけだよ」

自分のことを疑っているのだろうという一星の言葉に対して、ほたるが返した言葉。ほたるのその言葉は、たしかに一星の心を動かしていた。



「いけーっ、一星ー！！」


稲森の言葉が、一星の中に眠る遠い記憶を蘇らせる。

「──いけーっ、兄ちゃーん！！」

弟との、大切な記憶。誰よりも一星のことを気にかけていた稲森のこれまでの行動は、決して無駄な事ではなかった。一星のあの頃の気持ちを、大切な思い出を、思い出させてくれた。


──暗闇の中で一人踠(もが)くことしかできなかった一星に、手を差し伸べてくれた。




「(もういい。もういいよ、兄ちゃん)」

「(──えっ……？)」

「(ごめんね。俺のせいで、兄ちゃんを苦しめちゃって。でも、もういいから。俺のために頑張る必要なんてないから)」

「(──違う！ 光の所為(せい)じゃない！ 光がいたから。光のお陰で、俺は今までやって来れたんだ！ お前ともう一度サッカーがしたくて……！ お前が……生きてるって、信じたくて……)」

「(サッカーなら、いつでも一緒にできるでしょ？ 忘れたの？ 俺たちは、二人で一人。二人で一つのチームだって！)」

「(──忘れるもんか……！)」

「(俺は、いつでもここ(・・)にいる。兄ちゃんと一緒にいる！ 俺たちは、永遠にチームだろ？)」

「(──そう、だよな。一緒に。ずっと、一緒に……！)」



「──俺たちの、サッカーを……！！」

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