【オリオンの刻印】間違えて日本代表に選ばれちゃった系女子、世界を相手に奮闘する。その３

その１０９：こんな呆気ないことある？ ページ17

☆



サウジアラビアのキックオフで始まった試合では、ほたるの予想通り早速一波乱が起こり始めようとしていた。



「野坂の戦術のキープレイヤーは、風丸と吹雪だ。奴らはラフプレー対策の特訓をしている。生半可なタックルでは──」

「黙れ、無能が」



何やら会話を交わしている様子の一星と相手チームの十番・アンドレアスをよそに、ボールを奪おうと風丸が動き出した。

スライディングを駆使して見事にボールを奪い取ることに成功した風丸は、以前野坂が予測していた通りサウジアラビアのラフプレーの餌食となってしまう。



「まずはお前からだ！」

「無駄だ！」



練習の甲斐あってか、風丸は彼らの集中攻撃に怯むことなく軽々とそれを躱していく。しかし、問題はここからだった。



「なっ」



不意に風丸が動きを鈍らせたかと思うと、その僅かな隙を突いてサウジアラビアがスライディングを仕掛けてきた。それも、明らかに彼の足元を目掛けて。

不意打ちに対応しきれなかった風丸は、サッカー選手の命とも言える足に深傷を負うことになってしまう。



「風丸、大丈夫か！？」

「すまない……躱せると思って、油断してしまった」



咄嗟に駆け寄り声をかけた円堂に、風丸は口惜しげにそう語る。そうして彼の元へと係員がやって来たかと思えば、風丸は呆気なくフィールドから退場してしまったのだった。



☆



試合再開後。スローインを行った氷浦から、風丸に代わっての出場となった岩戸へとボールが回る。



「い、いきなり来たでゴス……！」

「落ち着け、岩戸！ 困った時は周りを見るんだ！」



岩戸はボールを受け取るや否や周りを取り囲むサウジアラビアの選手たちに戸惑いながらも、円堂の指示通りそっと周辺を見渡した。



「岩戸くん、こっちだ！」

「ゴス！」



吹雪の呼びかけに応じて、岩戸は咄嗟にパスを送った。難なくそれを受け取った吹雪は、そのまま前方へとドリブルを進める。



「ふうん。今度はボクってわけだね」



例の如く集まってきた相手選手たちに、吹雪は余裕ありげにそう呟きながら攻撃を躱していった。風丸の時と重なるその光景に、皆は思わず固唾を呑む。

しばらく吹雪とサウジアラビアとの攻防戦を続けていると、不意に一星が動き出した。



「吹雪さん！」



坂野上が何かを察したようにそう叫ぶも、時既に遅し。

実況アナウンス曰く"吹雪のサポートに向かった"らしい一星が吹雪に激突したことで、吹雪はバランスを崩し転倒。その隙に仕掛けられた相手選手の攻撃によって、敢え無く吹雪も負傷退場することとなってしまったのだった。

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