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"第一幕 揺れ動く幕開け" 7話 ページ8

ここに来てから、幾度どなく見ている光景だ。

朝にきては、各自「ちわーす」や「こんちはー」なんて挨拶を交わしてグラウンド内へと入っていく。私には、言葉の意味がよく分からないけれど、とっても大切な事なんだろう。というのは理解できる。

「おにぎりあるから、一人二個ずつねー!あ、三橋くんは三個ね、阿部くんが良く食べろってさ」

しのーかは手製のおにぎりを大きなお盆に乗せて持ってくる。
お盆の上には握られたおにぎりが行儀良く並んでいた。見ているだけでも、美味しそうな湯気が漂っていて、その匂いつられ青年達はごくりと喉を鳴らしていた。

「えーっと、昨日のジャングルジム氷おにの結果で…。一位の田島くんは好きなの、選んでいーよ。んで、二位の泉くんが……ーー」

おにぎりの具材は好きに選べる訳じゃないらしく、先日に行った“遊び”の順位によって具材もかわるらしい。
上位は好きな具材を選べ、中位はそこそこ。下位は苦手な具材を選ぶことになるらしかった。

“遊び”というのがなんなのか、はよくわからないけれど。それを行っている時の青年達はとても真剣で、そして楽しそうに見える。

お盆に沢山乗っていたおにぎりは少なくなり、そして遂には各々のお腹へと消化されていく。

端から見ている私が驚くのが、青年達のおにぎりを食べるスピードが異様に速いこと。そこだけが凄く気になって仕方ない。

ーどうやってあんなに速く食べているのだろう…。

“物を食べる”という概念すらない私からすれば、“食べる”ということに意味はあるのか。疑問に感じる。

「…あ、のさ」

一足先におにぎりを食べ終わったタジマが、未だ食べ続けているミハシにちょっかいを出し始めた。そんな最中に、声がかけられる。

もちろん、私に言ったものじゃない。

好き好んで小汚ない“縫いぐるみ”なんかに話しかけたりはしないだろう。

しかし、なら何故。
目の前の青年は、少し跳ねた黒髪でちょこんといすわる特徴的な団子鼻の青年ーおきは。

私の目の前で、私の目を見て、喋っているのだろう。

「…勘違いだったら、いいんだけどさ。君、ずっと…ー喋ってたり、する?」

……。

何を。
何を、言ってるんだろう。

思考が、考えが、感情が。マヒ、する。

私は、誰にも聞いてもらえない。
喋ってても誰にも、言葉なんてわかってもらえなくて。だから、私は一人でいつも…。

ーわか、る…の?私の…言葉

「ー分かるよ。何でかは、分からないけど…」

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うみしお - hina hihohoさん» 皆好き…すごく分かります!皆個性的でカッコいいですもんね〜。ついつい応援したくなっちゃいます。 暖かいコメントありがとうございます、もっともっと頑張りますね!^^ (2017年12月4日 14時) (レス) id: 1a7d18c6c3 (このIDを非表示/違反報告)
hina hihoho(プロフ) - うみしおさん» そうなんですよねぇ〜。阿部くん田島くんが多くて...私は泉くんおしです!沖くんも大好き!てか、皆好き!これからも頑張って下さい! (2017年12月4日 7時) (レス) id: 0035085ab5 (このIDを非表示/違反報告)
うみしお - hina hihohoさん» コメントありがとうございます。おお振り内じゃ沖くんが一番好きなのですが、沖くんの夢小説があまりにも無くて…自分で書いてしまいました…!沖くんは本当に癒しですよね、わかります…! (2017年12月4日 2時) (レス) id: 1a7d18c6c3 (このIDを非表示/違反報告)
hina hihoho(プロフ) - おお振りの夢小説を書いている仲間がいた!沖くん癒されますよねぇ〜。私も好きです! (2017年12月3日 9時) (レス) id: 0035085ab5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うみしお | 作成日時:2017年11月28日 23時

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