Snow brothers. (ページ9)

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Tatsuya

ガラッと扉を引いた病室の中。

真っ先に聞こえて来るのは荒い呼吸音と、若干テンポが遅目の心電図の音。

康「しょった、辛いなぁ…。」

ベッドサイドの椅子に座って、翔太の胸やら背中やらを擦ってくれてるのは、

関西から来た看護師、向井康二。

丁度翔太が小児科を卒業するタイミングでここに来たこともあって、

仲も良いし、家族だからこそ中々話せないことも康二にたまに聞いて貰っているらしい。

凄く優しくて明るいから、この仕事がほんとに天職って感じだし、

昨日もラウール曰く、眠れない翔太に殆ど付きっきりでいてくれたみたい。

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康「あ、ふっかさん!おはようございます!!しょった、お兄ちゃん来たで。」

阿「ん、ふっか来てたんだ。おはよ。」

聴診器を外しながらクルッと振り向いたのは、

翔太の主治医の阿部ちゃん。

俺の大学からの同期でもある。

とっても優しいし優秀な医師だから、尊敬も信頼もしてるし、

阿部ちゃんが翔太の主治医になってくれて、ほんとに良かったなって思う。

俺が何とか治してあげたいって思うけど、原則家族の治療は出来ないことになってるからね。

阿部ちゃんはいつも丁寧に診てくれるし、きつそうな時にはこまめに様子を見に来てくれる。

今だって朝のラウンドは終わってる時間だから、もう一回診察してくれてんだなってね。

忙しいのに、ほんとに有難い。

「おはよ。、どう？」

阿「うーん。お薬入れてるんだけどねぇ…。」

やっぱり中々改善していないらしく、

発作は起きて無いけど、胸の圧迫感と息苦しさがキツいみたい。

当人はハァーハァーってゆっくり息して酸素マスクを曇らせるので精一杯。

左胸に手をやりながら、ぐったりクッションとサイドテーブルに体重を乗っけて、

前傾姿勢で必死に胸の痛みに耐えている。

この状況だと多分仰向けも苦しいし、

痛みと息苦しさで眠れてないみたいだった。

翔「…んっ。ﾊｧ、にいちゃ、ん…？ｺﾞﾎｯ、ﾊｧ…」

「うん。翔太、喋んなくて良いから。ゆっくり吸って。」

眠れてないボーッとした状態と、中々治まってくれない胸痛と闘う中、

そっと近づけば何とか言葉を紡ごうとしてくれる翔太。

でも今は息をするので精一杯で、喋る余裕も無さそうだから、呼吸に集中させる。

辛いなって背中擦るしか出来ないことに、医者として情け無くなった。