trouble.37 探究心。 ページ39
「入り給え」
武装探偵社から徒歩凡そ十分、少し住宅街に入って行くと見える所々古びた社員寮。
国木田が云っていたように、住める人数は少なく、部屋は狭い。
部屋の扉を開け、蓮に入るよう促す。
「……汚い」
「いきなり人様の家に入っておいてそれかい!?……まぁ、其れは認めるけれども」
蓮の云う通りであった。
部屋に入り、まず目に入って来たキッチンはもう原型が見えないほどカップ麺の食べ終わった容器の山で、料理はとても出来そうでない。
次に一番広い部屋に入ると、これまた飲み終わった酒瓶、ビール缶の捨てられていない山に加え、空の蟹缶が大量に積み上げられ置かれている。
終いには悪臭に引き寄せられハエが飛んでいる始末だ。
「自分、何処でも良いって云ったけど汚いのは無理なんで国木田サンの家に行っても良いすか」
鼻をつまみ、苦い顔をする蓮はくっさ…本当に臭い…と呟く。
其れに対し、太宰は開き直った様子で。
「確かに、私も此の状態では蓮君は住めないと思うよ?だからね、」
「…自分に住むなら掃除しろと云う事ですか」
太宰は蓮に華麗なウインクを送った。
バチコーン、と。
「その通り!国木田君の家には住めない事情があるからね!…あ、因みに蓮君は家事得意?」
「…太宰サンより出来ると思いますけど」
太宰は喜んだ。
*
「そろそろ寝ようか」
結局太宰に掃除を手伝わされた挙句、料理も作った蓮は疲弊していた。
因みに晩御飯は蟹チャーハンだったそうな。
クリーニングに掛けられ、綺麗に押入れに仕舞われていた使っていない国木田のふかふかの布団を借りて来た蓮が其れにシーツを素早く着け床に敷く。
太宰より家事は出来る、と蓮は云っていたが、その家事の腕前は想像以上でプロのようだったものであり、後日探偵社で太宰により広められる事となる。
「…未だ酒臭いですね」
「仕方ないよ、私は愛と酒で出来ているからね」
「…馬鹿じゃないですか…?」
矢張り疲れているみたいで、冗談を斬った蓮は直ぐに布団で眠りに落ちた。
少し手伝わし過ぎたかな、と太宰は秀麗な蓮の横顔を見つつ微笑む。
男を余り好まない太宰も何かと蓮に興味を持っていた。片眼の眼帯。語らない過去。…外さないストール。どれも太宰の探究心を擽るものだ。
「…明日から私を愉しませ給えよ、蓮君」
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梓(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます!!これからも面白くしていけるよう精進して参ります! (2019年7月21日 17時) (レス) id: 73b249ebe7 (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - とっても面白いです!応援してます! (2019年7月21日 9時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梓 x他1人 | 作成日時:2019年1月21日 0時