７９その１ ページ45
「うわ、伊藤くん揉めてる…」
「あの馬鹿、オタクのカッコで啖呵きっても怖かねーのに」
ざわつく人混みを抜けて近づけば伊藤くんは他校の男子2人と睨み合っていた。
おみくじのおっさんが困っように涙目で周りを見渡し助けを求めている、可哀想
どーするかと三橋をチラリと見れば鬘を外し、俺に渡してきたので受け取るとそのままズカズカと向かって行った
「何やってんだオタク、おみくじもまともに買えねーのかよコラ」
水戸黄門の印籠を見せつけるあのシーンの様に金髪姿で堂々と前に出た三橋は絡んでいた他校生を横目に睨む。イカれた金髪だ、と呟いた野朗共は視線を下げてそそくさと逃げて行った
「やっぱ人間見かけで判断すんだな」
「今の伊藤くんは20年前くらいのフォーク歌手って感じで怖くねーもん」
ガックリと肩を落とした伊藤くん、さらに追い討ちをかけるようにお前はオタクなのだと囁き続ける三橋
放っとこう
「赤坂さん、そろそろ降りなきゃ集合間に合わねーから行こうぜ」
「ンま、もうそんな時間？早いわねー」
「楽しい時間はあっという間なのです」
先に降りて行った2人をゆったりと追いながら明日の話に華を咲かす
明日は東福寺と映画村、実際に映画の撮影されている場所に行けるのは中々ない。住んでた頃は滅多に行かなかったし楽しみだ
下に着くと伊藤くんは居らず、三橋が1人きょろきょろ忙しなく頭を動かしていた
「何やってんの」
「伊藤がよー急にいなくなっちまったんだよ」
変だよなーと首を傾げる三橋
探してみようかと視線を動かすと髪の長い男─伊藤くんが建物の裏からひょっこりとこちらを覗いていた
暫く何処かへ行ってくれ、とジェスチャーしているらしい。あそこ公衆電話あったし彼女に電話でもすんのかな
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2019年10月4日 23時
