５１ ページ13
外が広いんだからそりゃ中も広いわけで。
タッパがそこそこある男3人が立っているというのに余裕のある玄関、先には掃除の行き届いた美しい廊下。
飾られた装飾品はどれも煌びやかで、美術品や骨董品なんかに興味のない俺でも高価なものだということが分かる。それがいくつもあるのだから参ってしまう
ぶつかって壊したりしたらたまったもんじゃない。
鞄を腕に抱え込んだ。
空いた口が塞がらないとは今の状況を指すんだろう
「…広いんだねェははは」
乾いた笑いしか出なかった
ここまで大きな格差があると逆に冷静になれる気がする
「オ、オオ…」
流石の三橋も圧倒されているのかさっきからおーとか、わーしか言っていない。キョロキョロと見渡して飾ってあるものを見てはうんうん唸っている
「すげー庭に池まである…」
窓から見えた立派な池に感心していると三橋が池の方へ走っていった。
そして池を囲む大きな石を持ち上げて全力で投げ入れた。バシャンと大きな音で水飛沫を上げたのを聞き慌てて出て行った伊藤くんが三橋を怒ったが、半泣きで俺ンチの土地よりでかい池が作りやがってと叫んでいる三橋を見るとなんだか可哀想で心が痛い。
「金持ちのクセにチンケな事でガタガタ言うんじゃねぇーよ！」
悔しくて泣くくらいならやるな、こっちが悲しくなってくる…
ベンツの方へ走って行く三橋を追いかける伊藤くん達から目を離しまた家の中をぐるりと見渡した。
しかし本当に良い家だ。羨ましい
大人になったらこんな家に住みたいな、と考えていると一つのドアが開き中から伊藤そっくりな女の子が出てきた
「こんにちは」
「騒がしくてすいません、お邪魔してます」
「いえ此方こそ直ぐに出ずすみません、兄のお友達ですか？」
「はい、光るに橋で光橋のAです」
軽くお辞儀をするとはにかんだ笑みを浮かべ丁寧ですねとお辞儀を返された。
めっちゃいい子や…
そこへダダダっと走ってきた2人
お帰りお兄ちゃんと言った彼女へ三橋を紹介しようとした伊藤くんの言葉を遮って三橋は真剣な声を出した
「何コレ、俺ンチにはねーぞ…金で買ったのか？」
妹ちゃんを指差しながら激しく瞬きを繰り返す
コイツ混乱しているのか妹ちゃんのことコレって言ったぞ
「そんなわけねーだろが！妹だよ！」
イモウト？と鸚鵡返しする三橋の肩を優しく叩いた
もうやめろ、傷つくだけだ
そこへ追い討ちをかけるように現れた美しい声に呼び止められる
「あら、お客様？」
自分から望んで訪れたはずなのに…
帰りたい、無性にぼろっちい爺さんの家が恋しくなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2019年10月4日 23時
