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「くったくったー」
ニコニコと笑い、少しポッコリとした腹を摩る三橋を見ながら伊藤くんは満足気に頷いていた。
奢ってもらっちゃって悪いな、なんて考えながら鼻歌を歌いながら足取り軽く先頭を歩く三橋を追いかけ歩く
「ご馳走さま伊藤くん、悪いね」
「ははは…」
「もうこんな時間か、帰ったらルパム観れるなー！」
はしゃいだ声で話す三橋に若干息の詰まる伊藤くん。
観察している分には愉快な場面だがいざ自分がこうなると怖いな、巻き込まれたくねーなと思いあえて俺は会話に加わらないことにした。
「そーだな、じゃあまた明日ガッコでなー」
腕時計なんてしていないのに袖をまくって手首を見た伊藤くんは口をニッコリとさせ立ち去ろうとした。
が、それは叶わず三橋に肩を組まれ捕まる。
「楽しみだなー！」
「あ、あぁうんそうだな」
「茶菓子出せヨ！」
一気に死んだ魚の目になった伊藤くんは虚空を見つめ乾いた愛想笑いをしていた。
だめか、そんな心の声が聞こえたような気がする
.
数分後、とある建物の前で伊藤くんが止まった。
「こっ、ここだよ」
目の前に現れた豪邸
周りを見渡す、壁が視界の端まで伸びている
「「オオオ！？」」
思わず叫んだ。デカイ、デカすぎる
こんな立派なデカイ家はドラマや映画の中でしか見たことがない
「なんてデカイ家だーー！」
叫んだ三橋は玄関先に止まっている車に気がつき顔を青くしながら手招きする
どうしたんだと近づけば口をパクパクさせながら震える指で車を指差した。よく見ろということか
「……ベンツだと！？」
新車かと思わせるほどピカピカに輝く立派な車
近づいてよおくみると鏡のように顔が反射する
「オァーどうなってんだコリャー！なんだってんだよウギャーーー！」
「ちょ、三橋！ベンツさんに傷ついたら俺たち一生牢屋だぞ！」
「そんな事になんねーよ！2人とも頼むから騒ぐなよ〜」
アワアワとする伊藤くんに止められ正気に戻った。
ここまでデカイと並の金持ちじゃねーぞ…
そんな事を考えていると、三橋が豪邸と伊藤くんを交互に何度も何度も見やる。
そして顎に手を当て目を瞑り考え出す
数秒後、ポロリと涙を流した三橋が殺気立った顔で伊藤くんを睨みつけた
「テメーが偉いんじゃねぇぞ、親がエレーんだ！」
さっきの数倍はある声量で叫ぶものだから、流石の俺も三橋の口を塞ぎにかかる。
「んん〜！」
「伊藤くんもう中入って良いかな？指噛みちぎられそう」
「う、うん！とにかく入ってくれ」
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作成日時：2019年10月4日 23時
