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翌日の昼休みの時間、僕は響哉にお弁当を渡した。
不思議がる響哉に昨日彼に言われた言葉を口にする。
「愛妻弁当」
おおっ!と響哉から感嘆の声が上がり弁当を食す。
「美味しいっ!Aって料理出来るイメージなかったんだけど、これからは毎日作って貰おうかなぁ」
期待を込めた瞳で見つめられても僕の答えはノーだ。
正直お弁当作りが大変だとは思わなかった。滉に毎日お弁当を作ってる女子は凄いなと思うくらい。
「口に合って良かった。君の好みとか知らなかったし」
「え、マジ?俺の好物ばっかりだからてっきり知ってるのかと……」
目を丸くさせる響哉に苦笑いを浮かべる。
「君のお弁当の中身を真似ただけ。お母さんが作ってるんだろ?なら大丈夫かなって」
折角早起きして作ったのに、不味いとか言われたくなかった。
でも響哉の様子からしてその心配はなさそう。
そう思った時だ。頭上から声が降って来た。
「へぇ、美味しそうだね。Aの手作り?」
見れば飄飄とした笑みを浮かべる滉が立っていた。
女子達は連れておらず一人きりという図に首を傾げる。
「俺の分は無いの?」
「無い」
いやなんで響哉が答えるんだ。
思わずツッコミそうになり僕は咳払いを一つして滉を見上げる。
「何か用?」
そう訊く僕を滉は驚いた様に見据えた。
「彼女に会いに来るのに理由が必要?」
そう言う彼に神経が逆撫でされる。僕の事を散々放って置いたくせに。
「今度俺の分も作って来てよ。Aの手料理が食べたい」
そう迫る滉に困ってしまう。ぶっちゃけ面倒くさい、物凄く。
すると響哉が爆弾発言をした。
「あー駄目駄目。これはAが俺に作った愛妻弁当なんだから」
「は?愛妻弁当……?」
響哉の言葉に滉は息を呑む。かと思えば僕を睨んだ。
「何、愛妻弁当って。説明して」
だが運悪くチャイムが鳴り、滉は悔しそうに自分の教室に戻った。
放課後、やけに機嫌の悪い滉に連れられ彼の家に行った。
家に入ってそうそうソファーに押し倒され責められる。
「何で響哉にお弁当作ったの?面倒くさがりのくせに。俺には一度だってそんなの作ってくれた事無いじゃん」
鬼の様な形相でそう言われ僕は首を竦める事しか出来ない。
「ねぇ、答えて。それとも俺を嫌いになった?飽きたの?響哉を好きになった?」
ポタポタと両目から涙を流す滉にギョッとする。
彼はこんなに感情を剥き出しにする人じゃないのに。
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