悪役に祝福を。 ページ29
童話の中での悪役は大抵が魔法を使う魔女である。
ヒーローとヒロインを別れさせようとしたり、殺そうとして逆に返り討ちに遭ったり。
そんな人生を何度も繰り返し、今世は日本の女子高生となった僕。
けれどその高校には僕が仲を引き裂こうとした童話のヒーローとヒロインが複数人居るという状態で。
復讐とかする様な人達じゃないのは知ってるけど全員が前世の記憶持ちっていうのがなぁ……
それに全く関わらないっていうのも無理だ。何故か。
僕の幼馴染みが白雪姫の結婚相手である王子の生まれ変わりだから。
今まで前世の記憶に触れることもなく、白雪姫の話を読んでも何の反応も示さなかった。
しかし、高校の入学式で運命的に白雪姫と再会した彼は記憶を取り戻した。
それ以来童話の王子達とお姫様達は一緒に居るわけだけど……
「ねぇ、次の休みどこ行く？」
「ショッピングとか……」
「良いね〜」
これだけ聞くと週末のお出かけの話になる。問題は話をしている女の子達の方で。
「Aはどこに行きたい？」
サラリとした長い黒髪を揺らしながら僕に訊く白雪姫……もとい白石白雪。
その隣には美しい金髪碧眼のいかにも活発そうな
白雪姫とシンデレラと人魚姫の三人が勢揃いしているのは同じクラスだからだけど、彼女達は僕と仲良くしてくれる。
多分、白雪姫の元恋人の雅紀の幼馴染みだからだろう。僕が魔女だと気付いてないみたいだし。
「僕は、皆と行くならどこでも楽しいよ」
当たり障りのない言葉で言うと、遊び先はショッピングと決まった。良いのかな、魔女だった僕が一緒に居て。
でも本当の事を話して嫌われたくない。そう思うくらいにはこの人達と過ごす時間は楽しかった。
「あ……」
水姫が前方のドアを見つめて小さく声を上げた。全員の視線がドアへと移り僕も内心声を上げそうになった。
ドア付近に彼女達の王子様達が居てにこやかに手を振っている。此方に歩いて来た彼らは僕が一緒に遊びに行くことを喜んで受け入れてくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
