3話 ページ3
「……何で俺を助けたの？」
不意に殺人鬼がそう訊いた。
というか訊かれても困る。僕自身も分からないのだから。
「……如何してだろうね。苦しむ君を見て同情したのか、それとも罪悪感からなのか」
「罪悪感？」
きょとんとした表情で殺人鬼は僕に問い掛ける。
僕は彼の隣に腰を下ろし、傷口を指差す。
「それ、君が言った通り僕の所為だろ。だから放って置けなかった。死なれたら寝覚めが悪いし」
すると、殺人鬼は急に笑い出した。
不気味な感じでは無く、本当に明るい感じで。
「なにそれ！やっぱあんた面白いね」
少年の様な純粋な笑顔を向けられ、思った。
最初こそ戸惑ったし、怖くて彼の表情など気にも留めていなかった。
けれど、こんな風にも笑えるんだな。
じわっと、殺人鬼の胸に押し当てたタオルに血が滲んだ。
それで思い出した。
「あのさ、指輪を拾ったんだけど、若しかしてこれ君の？」
指輪を見せると、殺人鬼は目をパチパチさせ、大きく頷いた。
「そう！俺の！探してたんだ〜！」
紅い瞳をこれでもかとキラキラさせ、指輪を受け取った。
「旅人さんありがと」
ニコッと効果音が付きそうなくらいの笑顔でお礼を言われた。
「指輪に名前が刻まれてるけど、シンって言うの？」
「うん。そうだよ。俺だけ名前知られてるのは狡いなぁ。旅人さんの名前も教えてよ」
上目遣いでお願いされ、僕は自分の名前を名乗った。
「へぇ、Aって言うんだ」
見ると、何時の間にか彼の胸の傷は治っていた。
僕が驚いていると、それに気付いた彼は説明してくれた。
「この指輪を持っている限り、どんな怪我も直ぐに治っちゃうんだ」
「……じゃあ、指輪が無いと不老不死にならないの？」
そう聞くと、殺人鬼は首を横に振った。
「俺自身が不死身だから、指輪は関係無いよ。寧ろこれは契約の証だから」
その契約の事は訊かなかった。
聞いたらいけない気がして。
「それよりさ……」
殺人鬼は腕を広げ、僕を包み込んだ。
「捕まえた」
嬉しそうな、幸せそうな声で殺人鬼は言った。
ついつい彼に心を許してしまい、油断した。
しかし殺人鬼はぎゅうぎゅうと抱き着いてくるだけだった。
抱きしめる強さも、抵抗すれば簡単にこの拘束を解けるくらい弱い。
僕は困惑して殺人鬼に視線を向ける。
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望月海(プロフ) - 瑠色さん» わざわざありがとうございます！探して読んでみますね (2018年9月27日 17時) (
レス) id: e37311db21 (このIDを非表示/違反報告)
瑠色(プロフ) - 話題に出ているようなのでお節介に一言。
ルヴァンネさんという方の「人形師」というシリーズがありまして、人形師が主人公のことをずっと旅人さんと呼んでいるのです。
ホラーがお好きなら、おすすめの作品ですよ。 (2018年9月27日 16時) (携帯から) (レス) id: 04ea405d06 (このIDを非表示/違反報告)
望月海(プロフ) - てんてこまいのりーさん» その、ルヴァンネ？さんは存じ上げませんが、彼が主人公を旅人と呼んでる理由は、名前が分からず呼び方に困ったので、旅の者=旅人さんと呼ぶ事にしたのです。何か勘違いをさせたのなら申し訳ありません (2018年9月25日 21時) (レス) id: 9ce190e98a (このIDを非表示/違反報告)
てんてこまいのりー - とても描写や設定が上手く、面白いです…！殺人鬼くんにときめきました(笑)本当に申し訳ない事をお聞きします、旅人さんと呼ぶなど、何処かルヴァンネさんの作品に似ていますが、意図的なものでしょうか…？ (2018年9月25日 20時) (レス) id: c26c235155 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - 望月海さん» そうなんですね！私の友達にも僕っ娘がいるので、なんだか親近感が湧きました笑 お答え頂きありがとうございます！ (2018年9月25日 16時) (レス) id: 3a874cc5aa (このIDを非表示/違反報告)
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