殺人鬼と逃走劇

番外編7 サイコパスと何でも屋（前編） ページ14

俺がAと式を挙げた日に、彼奴らは来た。

Aには知られたくない存在。

変に恐がらせたくないから。

「ご招待どうも。にしてもお前が結婚するとはね」

嫌味を吐くソイツの台詞を聞きながら、俺は苦笑を零す。

「俺も、こんな自分を愛してくれる人が居るなんて未だに信じられない」

隣に立つ何でも屋の男が口を開く。

「でも、実際愛されてるんでしょ？良かったね」

優しげな表情を浮かべるこの儚い少年が、俺と同じで人を殺したりするなんて想像しないだろう。

しかもこの二人、不老不死だし。

「シンはあの子と夫婦になるんだ？精々殺さない様気を付けろよ。お前ただでさえ嫉妬深いんだから」

嫌味な様で、本当は俺を心配してくれてる。

サイコパスにもそんな心情は持っているみたいで。

「ちゃんと大切にする。傷つけたりなんか絶対しない」

だって唯一俺を愛してくれたから。俺の様なバケモノを受け入れてくれたから。

俺の様子を察した何でも屋は安堵した。

「シン。これはボクからのお祝いの品だよ」

わざわざ用意してくれたらしかった。

お礼を言って箱を開けると、中には人形が入っていた。

持ち上げると手触りが良くて、人形自体も可愛らしい。

Aに渡したら気に入ってくれるかも。

しかし俺には一つ懸念があった。

「この人形、普通の素材で出来てるよね？」

人肉なんか使ってたら流石にAに渡せない。

が、何でも屋の彼は相変わらずの優しい笑顔を浮かべたまま言った。

「大丈夫。普通の人形に使う様な素材しか使ってない。お嫁さんに渡すのに人肉とかは不味いでしょ」

と、彼も配慮はしてくれた様だった。

安心した。ならこの人形を渡しても問題ないや。

何でも屋の彼は、物を作るのが趣味で、何でも精巧に作る技術を持つ。

人間そのものを、皮膚や髪、骨まで再現できたり、動植物等も本物近くまで作れる。

椅子や机、日常的に使う物から遊戯に使う物と幅広く作る。

ただ欠点なのは、素材を本物の人間の肉を使ったり、時には死体を人形にする事もある。

俺には素材を人間にして何が楽しいのか分からない。

けれど何でも屋曰く、人間は最高級の素材と言っても過言ではないと言っていた。

血液を使えば呪術にも役立つとも言っていた。

俺はそんなのには興味がないから話半分で聴いてた。

「此処って人が沢山集まってるね。一人か二人貰って良い？」

貰う、とは勿論死体にする事で……

「駄目だよ」

と、俺は何でも屋に言った。

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