殺人鬼と逃走劇

番外編5 不安からの愛を（後編） ページ12

泣いている俺に戸惑いを隠せないのか、頭を撫でる動作はぎこちない。

俺は頭をAの手に押し付け、黙り込んでしまった。

あのカインって男を憎いと思った他に、怒りの様な感情も感じた。

でも、俺にはこの感情の名前が分からなくて。

ただ泣く事しか出来なくて。

Aは暫く俺を見つめていたが、軈て大きな息を吐いた。

飽きられたかなぁ……捨てられる……？

もう愛されない？

けれど、抱き締められた事により、その考えは吹っ飛んだ。

「シン、大丈夫だよ。最近放ったらかしにしてごめん」

謝罪の言葉を聞きながら、Aの温もりに触れる。

なんか久し振りな気がする……

思わずぎゅうぎゅう抱きつき、甘えた声を出す。

「置いて行かないで」

それを聞き、Aは笑顔を浮かべた。

「行かないよ。約束する」

今度はちゃんと手を繋いで家に帰った。



家に帰ると、俺は早速Aに膝枕を強請った。

これは一番俺が好きな事で、膝枕をしてもらいながら寝るのは気持ちいい。

Aの太腿ら辺に頭を乗っけながら、Aを見上げる。

手を伸ばして頭の後ろに固定すると、そのままぐいっと引っ張った。

唇が触れ合い、舌を無理矢理捻じ込んだ。

小さくながらも喘ぐAに興奮し、膝枕の体勢から押し倒した。

頭を打ち付けない様気を付けて、キスを続ける。

ふと、全くAが抵抗しない事に気付いた。

この前なんて容赦なく腹を殴られたのに……

手で俺の髪を撫でるAに問い掛ける。

「抵抗しないの？」

そう聞くと、何言ってんだ此奴。みたいな目で見られた。

え、ちょっと解せない。

「構ってって言ったのは君だろ」

思わず目を見開いたが、直ぐに嬉しくなって抱き着いた。

重いとか言われたけど気にしない。

「だって寂しかったんだもん」

そう言うと、吹き出した。

「君って本当甘えん坊だなぁ。嫌いじゃないけど」

ああ、相変わらず俺の欲しい言葉を言ってくれる。

「好きって言って」

「好き」

短い一言。けれどとても感情が込もっていた。

「俺も好き。愛してる」

このまま身体も繋げたい、なんて……

でも本気で嫌がる事はしないって決めてるから。

俺はAの横に寝転んだ。

そしてある想いを告げる。

「俺が寝ても傍に居てね」

起きたら居なくなってるとか、ほんと勘弁だから。

逃さない様に手を繋ぐ。

束縛気味だけど、許してよ。

それだけあんたの事、愛してるんだから。

-fin-

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