【HQ】及川さんは一途らしい３ (ページ48)

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過保護ページ48

ー自分視点ー

皐月「はい、強制終了のお時間となります。
とりあえず糖分と水分の補給です。」

合宿後のひどい頭痛の後からまた一段と過保護になった皐月さんは私が文章を打ち込んでいたノートパソコンを取り上げ、ちゃんとデータが飛ばないようにセーブをして、散乱している書類を再び見つけやすいように片付け始めた。
非の打ちどころの無いやり方だからケチをつけられないのがまたしゃくである。
…まぁ、こうやって過保護にしてしまったのは私のせいなのは全面的に同意するしか無いけれど。

『わぁ、今日はおぜんざいですね。』

抹茶寒天、白玉団子、栗の甘く煮たの、そしてもちろんあんこ。
粒あんなのでどうやら関西風なのだと、緑茶を最初にちびりと飲むと皐月さんが教えてくれた。

皐月「どうぞ、温くなる前に食べてください」

今日もまた暑いですからね、と言いながらもちゃんとジャケットを羽織りながら汗ひとつかかずに涼しい顔だ。どう言う体をしているのだろう？ある程度の外気温に達すると熱の代わりに冷気でも生成するのだろうか？

進められるがままに木のスプーンで白玉とあんこをすくう。
次は抹茶寒天と栗、と決めているので食べる前からワクワクがたまらない。

優しい甘さが鼻孔をくすぐり、それを口に入れればなんとも言えない幸福感に満たされる。
硬すぎず、でもちゃんと形ある粒あんは甘さ控えめで、白玉団子は冷えているのに硬くない。

二口目の寒天はすっきりとした甘みと濃厚な抹茶。栗はいい具合の歯応え。

なんて美しい組み合わせだろう。
美味しいではなく、どうしてか”美しい”とか”雅”と言う形容詞が浮かぶおぜんざいは気づけばもう空になっていて、皐月さんはニコニコと嫌味のない優しい笑みを浮かべている。

誘拐されたり合宿での件があったからか、彼は悪戯めいた笑みを浮かべることが少なくなった。
もちろんだからと言って私に接する態度が大きく変わったと言うわけではないけれど、でもやっぱり少し違和感を感じる。
…責任を感じている、と言うようなことを言っていたのを思い出す。寝起きだったから記憶は曖昧ではあるけれど、皐月さん…相当参ったような表情をしていた…

今回ばかりは私の所為なのに。
　
　