飛雄ちゃん ページ19
『篠原Aです。
これから1週間よろしくお願いします!』
まばらに聞こえる拍手を耳に軽く頭を下げる。
あぁ、人前に立って話すのはやっぱり少し苦手だ…
赤葦「最初は烏野高校と試合みたいですね。」
『あぁ、飛雄ちゃんのところも来てるんだ。』
わちゃわちゃと跳ねるオレンジ頭の男の子が視界の端を動く。
徹が警戒する日向くん。
日向「あー!!
大王様の彼女!」
タオルとドリンクを用意していればそんな声が聞こえる。
油断していたからか心臓が荒ぶって持っていたハンカチを落としそうになった。
『う、うん、お久しぶり日向くん。
なっちゃんは元気してる?』
日向「はい!
妹がまた会いたいっていってました。」
光太郎くんとはまた違う、陽だまりのような暖かさを放つ彼と他愛もない話をしていたらムズムズと口を尖らせた飛雄ちゃんがやってくる。
影山「うっすお久しぶりです、篠原先輩。」
『飛雄ちゃんもお久しぶり。
元気そうで何よりだね。』
それでも似合わず小難しい顔をしている。
どうやら、この二人の間に何かあったのだろうなと察す。
影山「あれ、でも及川さん達は来てないんすよね?」
その言葉を聞いて日向くんはキョロキョロ辺りを見回した。
『うん。
今回は私一人だけ。練習を見せてもらうのと、手伝いに来た感じ。』
まぁ、息抜きも兼ねて皐月さんが家から遠ざけようとしてくれているのもあるけれど。
そういえば彼はふーんと、特に何かを探ろうとするそぶりもなく素直に飲み込んだ。
普通別チームのマネージャーが単独で来たらおかしいと思わないだろうか?実際日向くんは少しぽかんとしているし。
『そろそろ始まりみたいだよ。
頑張ってね。』
影山「うっす。
俺たちは強くなった…です。だから目に焼き付けて、及川さんに伝えといてください。」
野生の動物のように光らせる目が私と合う。
ぞくりと、殺気のようなものを感じる気がするのも一瞬で、彼らは再びわちゃわちゃと飛び出していった。
中三の頃の飛雄ちゃんとはまた違う、闘争心の殺気に若干ビビるとともに、どこか親戚のおばちゃんめいた安心感を覚えた。
121人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あやにゃん | 作成日時:2019年4月16日 0時