お爺様 ページ2
本邸を目の前にした私はくらりと目が回りそうになった。
見上げるほどのそれは、仙台のお屋敷街のど真ん中にそびえ立っていた。あまりにも長すぎる垣根。ここは公園だろうか、そうだと言って欲しい。
「どうぞお進みください」
絶句した私を見かねたのか運転手の男性がドアへと続く庭の小道を歩くように手で促す。
徹はきたことがあるのか、少し呆れたような、緊張しているような複雑そうな表情である。
慣れないヒールで砂利混じりの石畳を進む。靴に傷をつけてしまわないかヒヤヒヤする。
右に左に美しく咲き乱れる花は手入れが行き届いていて、どれもが輝いていた。
遠くの方に見えるバラの絡んだアイアンドームや、ラベンダー畑にここは日本ではない何処かと錯覚させる。
重々しいドアが押し開けられ、まず見えたのは下手すれば小さなアパートが一軒丸々入る様な玄関ホール。
真紅のカーペットが引いてあり、それは今おろしたばかりのものの様に綺麗。
玄関ホールの奥にある広い階段の前に上等そうなスーツ…いや、所謂燕尾服に身を包んだ男性がにこやかにお辞儀をした。
「徹様にA様ですね。
お爺様の
どうぞと言って彼は重さを感じさせない動作で同じく赤いカーペットの階段を登り始めた。
奥まったところの、一際大きなドアが歴代当主の部屋だそう。
ノックをすれば、少し気難しそうな男性の声が聞こえてくる。
「お連れいたしました、徹弥様。」
あぁ、と一言にも満たない言葉を返したのはマホガニー製の大きな机の後ろに座るロマンスグレーの男性。
なんとも言えない威圧感に少しどもる。
『と、徹さんのお爺様、お初にお目にかかります
篠原 Aです』
及川「徹です。
お元気そうで何よりです」
徹はいつもの外向きの笑顔を浮かべた。
ゆっくりと男性は立ち上がり少しの手振りでここまで案内してくれた男性を外へ出した。
するとパッと表情が変わる。
威圧感満載から優しい、どこにでもいる様なおじさんに。
「2人とも、よくきてくれた。
特にAさん、会えて嬉しいよ。かれこれ16年らいかな」
私の右手を取り、彼は握手をした。
徹の笑顔もこのお爺様譲りなのかなと妙に納得してしまった。
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あやにゃん(プロフ) - 紅葉さん» 一章と二章、どちらにもコメントくださって嬉しいです!(皐月さんは私の好みモロ出しにしてみました笑) そうですね、今作品のテーマは世界観や視点が変えられること、そして変えざるを得ないことでして…(でもやっぱり表現が少し大袈裟なので文章力が欲しいものです笑) (2020年6月2日 16時) (レス) id: 41b9de9ad7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - が、頑張れ篠原ちゃん……(その一言に尽きる)。皐月さんが好きです笑!世界観がどんどん広がっていくのがわかって楽しいです。 (2020年6月2日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやにゃん | 作成日時:2018年8月19日 8時