ド派手な継子 壱

参拾肆話 求婚騒動 ページ35

「なんで私が君と結婚しないといけない訳？」

「そんなこと言わないでくれよォ！俺すぐ死んじゃうから守ってぇえ！！」

「私弱い男は嫌いなの！」




裾を掴んで懇願してくる彼に嫌気がさす。


あぁ、うざい。ウザすぎる。

酒を飲んだ師匠よりも鬱陶しい。




「泣くな！男の癖して女に弱みを見せるな！そんなんじゃあ鬼を狩ることなんて出来ると思うなよ！」

「俺だって好きで此処に来たんじゃないよォ！爺ちゃんに言われて仕方なく来たんだよぉ！」




だから弱い俺を君が守ってぇ！！



掴んだ裾を離すことなく私に縋り付く彼の姿はとてもじゃないが見てられない。




「はぁ、いい加減放してくれない？派手に斬るよ、君のこと。」

「君になら斬られてもいい！」

「きも」





もう我慢の限界だ。こんな所で道草食うほど私は暇じゃない。



「悪く思わないでね。私を引き止めた君が悪い。」

「え？」



“顔の呼吸!”



お面を外して彼に目を向ける。

すると頸を斬った鬼よりも派手な血飛沫が上がった。



鼻血を垂らして彼はまるでその光景を焼き付けるかのように目を見開き美しい……と、呟きながら倒れた。



そのままにするのは可哀想なので入山前にちぎりとった藤の花を彼の上にばら撒く。


そして怖いので目を閉じさせてその場を静かに去った。

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