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「あ、ここ家」
「案外近かったな」
「あんまり電車使わないけどね。自転車通学だから」

家の明かりはついていない。
母はまだ帰っていないようだった。
繋いだ手を離すのがなんとなく惜しくなってしまう。

「キヨ、送ってくれてありがとう」
「おう。またな」
「うん」

そっとキヨの手が離れる。
それが何故かとても悲しくて。
気づけばキヨの服の裾を引っ張っていた。

「え?」
「あ、違…えと。なんでもない」
「なに?俺と離れるの寂しい?」
「……」
「あーもう」

私の身体が前のめりに倒れる。
ああ、前もこんなことあったな、と思いながら私はキヨの胸にダイブした。

「あったかい…」
「A、ちょっとこっち向いて」

キヨに催促され私が顔を上げると、目の前にキヨの顔があった。

「え…」

ゆっくりと、合わさる私たちの影。
キヨが離れた時の私の顔は、きっと熟れたトマトみたいに真っ赤だったはずだ。

「充電完了。寂しかったらいつでも電話してきていいから」

な?と、頭を撫でられる。

「うん…気を付けて帰ってね」
「ん」

こうして、私たちの初めてのデートは終わった。
その後、母と偶然鉢合わせしていたことを知らずに質問攻めされたのは別の話。

**

「A、おはよ。ねえ聞いて!昨日先週言ってたレアキャラ当たった!」

月曜日。
登校してすぐに私の傍に近寄ってきたのは二年生になって仲良くなった千歌ちゃん。
彼女は生粋のゲーム好きで、私とも話が合い、すぐに仲良くなった。

「おはよう。あれ当たったんだ!いいなー。私最近のガチャ全部爆死してて…」
「え!ガチャ運良いAが?珍しい〜。あれ、てかゲーム開いてないじゃん。珍しい」

私のスマホ画面に写し込まれたのはキヨとの会話。
普段メールも電話もあまり使わない私が誰かとスマホで会話しているのに驚いたのだろう。

「え?てかこれ…男?」
「…」
「え、嘘?ほんとに?人見知りのAが?」
「う、うん…」

肯定するしかなかった。

「ええ!?どんな人!?」
「え、えっと…大学生の…」
「歳上!?Aなにがあったの…」

あの非現実な1ヶ月を教える訳にもいかない。
どう説明しようかと私が迷っていると、千歌ちゃんは興奮気味に、

「今日。バイトないよね?私の家で女子会決定ね」

あまりの気迫に私は頷くことしか出来なかった。

(放課後までに何とか考えないと…)

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作者名: | 作成日時:2019年12月26日 12時

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