男装柱-弐-【不死川実弥】

第91話 ページ45

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『兄さん！神父様！！』






ずっと会いたかった…！

会って謝りたかった…！！






川に足を入れると、ひんやりと気持ちが良かった。

そして思ったより浅い。



これなら渡れる…！






「ッ、ダメだA！！来るな！！」



『どうして！？やっと会えたのに…！』



「止まりなさいAッ！」






神父様の怒鳴り声に、私も兄もピタッと動きを止める。

小さい頃から変わっていない習慣だった。





川のど真ん中で立ち止まった私。


神父様も川を渡り、私のところまで来た。
その後ろに兄も続く。






『ごめんなさい、ごめんなさい…！

何もできなかった。2人を埋葬することもできずに逃げたの。

私だけ生きてごめんなさい。

私のせいで死んじゃったのに…！！』







久しぶりに、幼児のようにわんわん泣いた。







「Aのせいじゃない。自分を責めるのはやめなさい。

私達はずっとお前を見ていたよ。

…立派になったね」




「謝るのは俺の方だよ。俺が弱いからAを守りきれなかった。ごめんな」



『そんなことない…ッ』






寂しさや不安、恐怖。

今までずっと溜め込んできたものが溢れてくる。






『本当はずっと怖かった…！1人で生きていくのは寂しくて、…ッ、男のフリしてまで身を守って、せっかく強くなったけど、強くなっても私には守るものがもうなかった…！虚しかった…

私の生きる意味、頑張る理由って何なのかなぁ…っ』





「…A」






ふわり、と兄に抱きしめられた。






「寂しい思いさせてごめん。

Aの傍にいてやれなくてごめん。



…でもさ。

今のお前には守りたいものや頑張る理由は本当にないのか？


大切な人のことを考えたとき、俺たち以外にも思いつく人がいるだろう？」







『……うん』








私を取り巻く環境は、ここ数ヶ月で大きく変わった。



口下手だけど思いやりのある友達も出来た。

どこか危なっかしくて放っておけない後輩もできた。

変わっているけど良い人そうな同期もできた。




そして。







誰よりも強くて優しくてかっこいい、好きな人ができた。








「A。俺たちの願いを聞いてくれ。

お前はもう、あの時の事に囚われる必要はないんだ。

強さにこだわる必要もない。復讐に駆られる必要もない。


今のお前の周りには、ありのままのお前を受け入れてくれる人が沢山いる。


だから…



自由に生きろ、A」







私は、小さく頷いた。

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