男装柱-弐-【不死川実弥】

第75話〜過去編〜 ページ29

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ここからはAさんの過去のお話です。
Aさんの語り口調メインでお話を進めていきます。



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町と言えないほどの小さな町。
そんな町の郊外に佇む教会。


その教会の神父様であるお爺さんと、兄と、私の3人暮らし。



これが、物心がついた頃の1番古い記憶だ。



私たちを育ててくれた神父様は父親じゃない。
父の顔も母の顔も知らない。

両親のいない幼子2人と、血のつながりも何も関係のない神父との、今思えば奇怪でしかない3人暮らしだった。



神父様は私たちを自分の子のように愛してくれた。

彼は日本人じゃなかったけど、
日本語が達者で、日本の文化や歴史にも詳しくて、私達は言葉も教養も全て彼から学んだ。

海の向こうの国のこともたくさん教えてくれて、とても興味深かったのを覚えている。



兄とは双子だった。
男女の双子なので、顔立ちも似ているところはあったが瓜二つとまでではなかった。

私は白金のような銀に近い金髪で、兄は艶のある漆黒の髪色。
真逆だったけど、神父様はどちらも素敵な色だと褒めてくれた。

2人に共通していたのは澄んだ青い目。


お兄ちゃんの瞳は、深く透き通っていて吸い込まれそう。

かつてそんな感想を兄に伝えたら、それは俺のセリフでもあるな、と笑いながら言われたことがあった。



私達の生い立ちはある程度予測できた。
日本人と、外国人の間に生まれたのだろう。

それも、望まれぬ形で。

それなら外国人の神父に拾われたのも納得がいく。


聞く人が聞けば私たちの事を可哀想、と思うのかもしれない。

確かに貧しい生活だったけど、辛くはなかった。


神父様はとても可愛がって育ててくれたし、
兄との仲も非常に良かった。


大きくなったら2人でお金を稼いで、恩返しに立派な教会を建ててあげよう、なんて話したこともあった。






……本当に、幸せだったの。

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